好き
今日が、最後かあ…と思ったら何故かいつもより早く来てしまった。
あるよね、あるよね。いやあるのか?よく分からないけどそういう気分だっただけです。
『…』
つつ、っと指先で自分の机を撫でる。
別に今の机と椅子が変わるわけではないけれど何故か哀愁がわく。
そして隣の席を見る。
もうこんな位置で見ることもないのかなあ…。
『…離れたく、ないよぅ…』
心のなかで呟いたつもりだった言葉は口から零れ落ちていて。
それと共に涙も目から零れ落ちる。
大袈裟かもしれないけれど、私には奇跡だったの。
だって、きっと隣になれなかったら一生なんの進展もなかった。名前を呼んだり教科書を借りたり、一緒に話して笑ったりなんてきっと出来やしなかった。
『…っ、ふぇ…っ』
こすってもこすっても、止まらなくて床に落ちていく。シミになって広がっていく。
『っ、っ…え!』
「弥白…?」
床にしゃがんでまだぼろぼろ泣いていると、後ろから声がかかった。
『…、ずやくん…っ!?』
「どうかしたのか!?具合、悪いのか!?」
なんで、ここに。そんな言葉は錫也くんの言葉に遮られた。
「…弥白?」
『…す、ずやくん…っすき…』
服を摘んで、抱きつくなんてそんなことは出来ないから。
それでもその行動と言葉に勇気をこめて。
「弥白…?」
『すき、…っ!す、き…っ!』
"好き"。たった二文字でしか私は言えないけれどそれでも有りっ丈の思いをこめた。
『…す、んむ!』
もう一度言おうとした言葉が遮られた。どうしてだろう。…ああ、抱き締められているのかと。
「…弥白、俺も好き、だよ」
『す、ずやくん…?』
「俺も、好きだよ…」
耳元で聞こえたその言葉。じんわりと耳に頭に浸透する。
ほんと?掠れた声で聞くと、返事の代わりに抱き締める力が強くなった。
「あー良かった…、俺の片想いだと思ってた…」
『私も、そう思ってたよ…』
「一緒だな」と笑った錫也くんに「ね」と笑った。
「ええ!?付き合いだした!?」
『わー!月子ちゃん声でかいよ!』
「ああ、今日から俺の弥白だぞ」
俺の。ぼんっと顔が真っ赤になる。それを月子ちゃんにからかわれる。そして錫也くんに可愛いと言われる始末。
恥ずかしくなって七海くんの後ろに隠れると七海くんが「やめろ俺が殺される!」と言っていたけど陽日先生が教室に入ってきて座れーと叫んだので何故だかよく分からなかった。
「………前、だな」
『………後ろ、だね』
席替えしたら、だ。私が錫也くんの前。錫也くんが私の後ろ。つまり隣だったのが前後になっただけだという…。
大泣きまでしたのに…!!恥ずかしくなって私は顔を押さえる。
あまりの羞恥に悶えていると、背中に指が走る。
『…!!』
「はは、耳真っ赤」
もう、なんか色々負けた気分。
背中越しに好き
(これからは、)(いつでも君に囁けるんだ)