隣に幸せ | ナノ

もうすぐサヨナラ


「そろそろ前の席替えから1ヶ月だしなー…、よし明後日席替えするぞー!」

天文学の授業の終わりに陽日先生がそう言うと前の方が沸いた。
反対に私はというと。

『え、…』

と、まるでこの世の終わりのような顔をしていた。


『せっかく…ちゃんと喋れるようになって名前で呼べるようになったのに…!』
「………弥白姉、ドンマーイ」
『だって聞いてよ梓!』

私は昼休み図書館に居た従兄弟にあたる梓に愚痴を溢した。
梓は本を読みながら一応は聞いてくれている。

「聞いてる聞いてる。何っ回も聞いてる。さっさと東月先輩に告白すればいいのに」
『こく…っ!?』

なにこのマセガキ!どうせ初恋もまだですよーっだ!

「なに赤くなってるの…」
『梓の積極性を少し私に分けてよ…』
「無理」

そう言いながらぺらっと本のページをめくる梓。

「同じ教室なんだから、チャンスはいくらでもあるよね…どんだけへタレなの」
『そう、だけど…』
「でも、もだけど、もない。弥白姉がどうにかしないとどうにもならないんだからね。言っとくけど」

こつん、と梓の拳がおでこに当たる。

『…ありがと、頑張る』


『あ…っ』

また、教科書を忘れてしまった。なんなの私。馬鹿にも程があると思うの。
しかもまた陽日先生の授業とか、絶対錫也くんに見せてもらえって言われるパターンじゃないか。

「またかー、最近珍しいなあお前が!隣の奴に見せてもらえー!」

ですよね…!くそう泣きたい。

『………す、錫也、くん?』
「…なに?」

あれ、なんか錫也くん不機嫌…?

『教科書、見せてもらっていい…?』
「…いいよ、」

にっこり。笑っているようでどこか違和感を感じる。
ありがとう、と言って机をくっつけた。


授業がもうすぐ終わりそうで私は睡魔と格闘中。
いきなりつんつん、と肩を突っつかれた。

『…?』
「………弥白ってさ…好きな人、居るの?」
『…はい!?』

思わず大きな声をあげてしまった。
陽日先生にはどうしたああ!と言われる始末。なんでもありません!と返して皆にも笑われた。

『…な、なんでそんなこと…』
「…その反応は居るみたいだな」

わーわーバレバレだ…!!もう無理。なんていうか無理。
思わずノートで顔を覆ってゆっくり数度頷く。

「…そっか」
『………うん』
「弥白なら大丈夫。がんばってな」

うん…、とノートの間で小さく呟いた。
だからきっと気付けなかったんだろう。このとき錫也くんがどんな顔をしていたかなんて。
もうすぐサヨナラ
君にさよなら



(…弥白の好きな人、木ノ瀬くんだろうなあ…)





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