「大事な人が貴方から離れていくでしょう」 『は、』 今日は街に買い物に来ていた。 暇潰しがてらよく当たると噂の占い師さんのところに立ち寄ってみたわけだが、 …不吉なことこのうえない。 大事な人って、? 『あ、あのっそれが誰だか…』 「そこまでは分かりません」 ばっさり、早いな即答ですか、そうですか。 『っ…ありがとう、ございました…』 早々にそこを立ち去った、泣いてしまいそうだったから。 大事な人といわれて真っ先に錫也先輩が思い浮かんだ。 私は3年生になり、錫也先輩は大学1年生になった。 会える機会はめっきり減った。 気持ちの量に差が出来たって、仕方がないとは思う。 …しかも錫也先輩モテモテらしいし。 大事な人。大事な人。 錫也先輩が一番大事な人なのに、 錫也先輩が離れていっちゃうの? 俯きながら考えていたら電灯に頭をぶつけた。 鈍痛がじんじん頭に響く。 気づけば雨も降っていた、ああどんだけ集中して考えてたんだろう。馬鹿じゃないの。 錫也先輩が離れていくのなら私には止める術など。 ないのだから。 「なまえ…? な、にやってるんだよ!びしょ濡れじゃないか!」 ぱしゃん、と何かが落ちた音とばしゃばしゃと水溜まりを踏む音。 タイミングが、悪すぎるよ錫也先輩。 首を回せば必死な顔で駆けてくる錫也先輩とその少し後ろで雨に打たれているビニール袋が見えた。 「傘もささないで…風邪引いたらどうするんだよ…?いま、大事な時期だろう」 『っ、ごめ、なさい…』 「とりあえず俺の家行こう。体冷えてる」 ぎゅっと握られた手は温かかった。 無意識に錫也先輩の家の近くまで来ていたらしい。 服を貸してもらい、風呂に入れられ、上がるとココアまで用意されていた。 至れり尽くせり、だ。 「で、どうしたんだ?何かあったか?」 『…』 何でもない、なんて誤魔化したって無駄だ。 黙りを決め込んだら、眉を下げて困った顔をした。 「俺さっき買ったやつキッチンで片してるから何かあったら呼んでな?分かった?」 こくり、と頷くと微笑んで頭をふわりと撫でられた。 ああ…やっぱり、すきです。 去ろうとした錫也先輩の服の袖を掴んで弱めに引っ張った。 「…どうした?」 『あの、一緒に居て…くれませんか?』 だからキッチンだろうが離れていかないで、今だけで良いから一緒に居て。 そう聞くと一瞬目を丸くして嬉しそうに微笑んで、 「良いよ、悪いなんて言うわけないだろ」 袖を掴んでいたい手を逆に掴まえ返されて連れていかれたのはリビングのソファ。 「おいで、」 招かれたのは錫也先輩の足の間。 そこに収まると錫也先輩が腰に腕を回して肩に顔を埋めた。 「…何があったか聞いて良いか?」 『…、あのですね、』 買い物しに街に出たことから頭を打ったことまで、 包み隠さず錫也先輩に吐いた。 「…それで、不安になっちゃったと」 『だ、って…錫也先輩はかっこいいし大学でもモテモテって聞いたし…』 「…ちょっと待って、それ誰から?」 『犬飼先輩…』 錫也先輩は犬飼くん明日覚えとけ、とかなんとか。 私は聞いてない聞いてない。犬飼先輩御愁傷様とか思ってないない。 「…モテるのかもしれないけど 俺はお前しか好きじゃないよ、隣はお前じゃなきゃ嫌だ」 『っ、』 「だから俺が離れていくことはないよ。 お前が俺から離れていかない限りな」 『そんなこと、ありえせん』 「じゃあずっと一緒だな」 ぎゅうっと抱き締める力が強くなった。背中に感じる熱が嬉しくて仕方がなかった。 「明日、学校休みだったよな」 『ん?はい』 いきなり思い出したようにぽつりと呟いた錫也先輩。 「泊まってくか?久しぶりに」 『良いんですか?』 「悪かったら言いません」 『やったー!』 喜ぶと錫也先輩は今日の晩御飯は張り切らなきゃなと笑っていた。 「でも今は一緒に居ような」 『あ、相変わらず糖度120%ですね…』 錫也先輩の言葉1つで私は安心するのだから単純なものだ。 酸素と共に愛を吸う (なんか俺、酸素みたいだな)(ないと生きていけないって点では一緒です!)(はは…) *おまけ 『は!?二人とも進路アメリカ!?』 「うん、やっぱ宇宙飛行士になるのには手っ取り早いし」 「ぬーん、なまえと離れ離れになるのだー…!」 『はー…インターナショナルな感…離れ離れ…?』 「ぬ?どうしたのだ?」 『こっ、こ…このことか―――っ!!』 ある意味当たってた。 ◎もかさんキリリク 錫也と一度だけヒロインの切甘でした 切甘になったか若干ごめんなさい状態です…!(^q^三^p^) 切甘はやっぱり永遠の宿題ですね…! ぶっちゃけおまけから思い付いたんでこんな話になりました とにもかくにもリクエストありがとございました!(*´▽`*) 2011.05.09. 望 ←→ |