『…』 黒板には白い文字が羅列しているというのに私のノートは真っ白。 シャーペンも動いていない始末。 私の視線の先には黒板じゃなく天文科のオカンこと、東月錫也君。 彼の手元は絶え間なく動いている。だってまあ真面目だから。 神話科の私は同じ選択科目のときじゃないとお目にかかれない。 しっかりと焼き付けないと勿体無い! 右隣の隆文くんが「どんだけ熱視線送っててんだよ」とからかい気味に呟いていたので頭を叩いてやった。 だって今日も相変わらずかっこいいんだもん、無意識に見ちゃう辺り病気だ。 『はあ…、』 どうせ東月くんにとって私は『ただの同級生の一人』だろう。目にも留まらない。 だって私は東月くんの幼馴染みの夜久さんみたいに綺麗でもないし素直でもない。 これといった取り柄もない。 だから、うん…見つめることだけは許して欲しい。 なんて、勝手だなあ。われながら。 教科書から東月くんを覗き見る。ああもう、…かっこいい。 見惚れていると、隆文くんが右肩をトントンと二回叩いた。 『なにさ!』 「いやお前当たってるぞ」 な、んだと…!? 隆文くんから目線を教卓の方へやると目を吊り上げている先生が。 「みょうじー、ちゃんと集中して聞いとけー!」 『すいませーん…!』 思わず首を竦める。東月くんをちらりと見るとくすくす微笑んでいる。 ああもう、恥ずかしい…! 勢いよく座って隆文くんをまた叩く。 『た、隆文くんのアホ!なんで教えてくれなかったの!』 「いっ、…て!俺のせいかよ!」 うわーん!東月くんに笑われちゃったよ…! 顔を押さえて唸っていると、また隆文くんに肩を叩かれた。 『今度はなにさ…!』 「いや、お前に手紙が回ってきた」 ほらよ、と手渡されたのはノートの片隅を破ったような折り畳まれた紙。 首を傾げながら開く、と "授業に集中しないと さっきみたいに怒られちゃうよ。 追伸 あんまり見られ過ぎると 俺に穴が空いちゃうんだけど?" 最後の署名のところに、東月錫也と書いてあった。 とうづき、すずや。 とうづきすずや、は一人しか居ないはず。 あれ、え、は、? ぎぎぎ…っと首を東月くんの方へ向けると、 「… 」 『へ、…』 悪戯に笑いながら口パクでなにか私に伝えてきた。 ちょ、バレてた!?バレてた!?もしかしなくてもバレてた!? その時間は放心して、授業内容なんて一つも頭に入ってこなかった。 授業が終わり、放心状態のまま席を立った数秒後肩を叩かれた。 振り替えると、 「みょうじさん」 『…と、とうづき、くん!?』 「そんな挙動不審にならなくても」 ははっ、と笑っている。 あの憧れの東月くんが、目の前に居る現実に卒倒しそうだ。 「さっき、なにいったか分かった?」 『あ、いやとんでもなくそのへんには頭が回りませんでした…!』 ああ口空いてたもんな、と一言。 そんな間抜け面まで見てたんですか、泣きたい。 「なに言ってたか聞きたい?」 『き、き、聞きたい、です』 「あのね、」 耳に顔を寄せ、手を添える。 その行動に気絶しそう、言い過ぎなんかじゃない。 好きだよって言ったんだ、とまるで悪戯した子供が楽しそうに誰かに教えるように。 私は告白されたのです、 (ふ、え、…ええええ!?)(ははっ、可愛い) ◎鈴音さんキリリク ジャンルお任せな錫也でした^▽^ 相手以外お任せということで… 私の残念で残念な想像力がいまここに晒されているわけですテヘッ← だいぶ遅れてしまいごめんなさい!・゜・(つД`)・゜・ リクエストありがとございました!! 2011.05.07 望 ←→ |