short | ナノ
『うひゃあ…っ、』
「………感じてんだったらもっと可愛げのある声出せ」

萎えるー、とか言う私の首筋に息を吹きかけた(変態)不知火一樹会長。
吹きかけられた所を空いた手でこする。

『可愛げがなくてすいませんね!ていうか変な事してないでさっさと書類やってください』
「コーヒー入れてくれ」

人の言葉をガン無視しやがる俺様会長。何こいつ腹立つ。

「そうそう残念だなあ。颯斗は今神話科の集まりで居ないんだ」

私が怒ったのを見越してニヤリ、と笑ってふてぶてしく自分の椅子に座る会長。
狙ってやってんな、このクソ会長。

『知りませんでした?』
「? 何をだ?」
『思わぬ伏兵が居る事』

どさっ、と持っていた資料を身近な机に置きさっと後ろから物を取り出した。(どこから取り出したとか突っ込まない方針で

『これなんだ』
「っ」

耳を塞ごうとした会長より前に緑の側面に爪を当て引っかく。

異様な音が生徒会室に響く。颯斗くん程ではないがそこそこの威力になったはず。

「っ…お前、何でそれ、」
『颯斗くんが何かあった時に、って預かってたんです』
「ちっくしょ、貸せ!」

会長は顔を歪めて私の方へ走ってくる。
そしてその長い手であたしの黒板へ手を伸ばした。
あたしはそれをさせないように黒板を後ろにやろうとした。

『あっ、』

リーチの差が出てしまった。
黒板は無残にも床にダイブ。壊れてたらどうしてくれるんだ。

「はっはっはっ!これでお前の最終兵器もなくなったな!」
『会長がさっさと仕事してくれれば一番いいんですけどね!!』

何を言っても仕方がないので黒板を拾い
自分の仕事に取り掛かる事にして机の上に置いた資料を手にとろうとした時だ。

「ちょっと待て」
『………ちょっと待て、で抱きしめられる意味が分かりません』

いいだろ俺はお前の彼氏なんだから、そう言って肩に自分の顔を置いた。
腰にはがっしり会長の腕が巻きついている。

未だに"不知火一樹の彼女"という肩書きは未だに慣れない。
そしていきなりのこの行動には心臓が止まりそうだ。

『…もう、仕事してください』
「そう言いながら邪険に払わないんだな。実は結構嬉しいんだろ?」
『っ』

はいそうです、実は結構嬉しいです。なんて言えるわけない、むしろ口が裂けても言えない。

「まぁそう言うな。折角2人だけなんだ。少しぐらい恋人らしい事したってバチ当たんないだろ」
『だからって、誰が来るかも分からないのに、』
「ま、そん時はどうにかなるだろう」

そう言って顎をあたしの肩と首の間にすりすりしてくる。
髪の毛が頬にちくちく当たってくすぐったい。

『会長、くすぐった…い』
「なんだお前。こういうのに弱いのか」
『違っ』
「そうならそうとはっきり言え」

抱きしめていた腕をぱっ、と一瞬にして離しあたしの向きを変えた。
そして顎に手を沿えばっちり目が合うようにされる。

『かいちょ、』
「こういう時ぐらい"一樹"って呼べないのか、お前は」
『…かっ、一樹…っ』

決死の思いで会長の名前を呼んだ。目を硬くつぶって。
何も反応がないので大分不安になってしまう。
会長?と声をかけようとした時上から声が降ってきた

「あーやばい、ほんとお前はそういうの…反則だよな」
『…は、反則って何が、ですか』
「…気付いてない、っと。まぁいずれ教えてやるよ。

今は、俺だけに集中してろ」

集中してろって、どういう意味ですか。その問いは次の行為に打ち消された。
目ぇ閉じてろ、とい言葉と共に柔らかな感触が唇を襲う。

『ん、』

いまだに慣れないキス。会長だけ余裕でずるい。
すぐ離れた。それでもやっぱり少しでも動いたらふれそうな距離に会長の顔はある。

『か、会長…近い、です』
「ははっ、お前は反応が面白くて飽きないな」
『楽しませるためにやってるわけじゃないです!』

分かってる分かってる、とあたしの髪をわしゃわしゃと乱した。

「さ、続き続き!」
『ちょ、続きってやめ、』
「会長、遅くなりま………っと、お邪魔しましたか」

がちゃり、という音と共にあらわれた颯斗くんが顎に手を当てそう言った。
私はフリーズし、会長は呆れ顔で颯斗くんを見つめた。…あたしを抱きしめたまま。

「お前は、ほんと空気読めね『っきゃああああ!!』うぉっ」
『ああ恥ずかしい!!なんで会長離してくれないんですか!ああもう!!』
「…吃驚しました。みょうじさんってそんな照れ屋なんですね」

呑気にそう言う颯斗くん。
会長の手を頑張って離そうとしても全然手がとれない。そっちに気をとられていると、

「ああ、可愛いだろ」

そんな台詞を颯斗くんに向かって言った後、あたしの頬にさっきのような感触が襲った。そして軽くリップ音。

「見せ付けますね」
「変な虫が寄らないようにな」
『っ、』


余裕な君と翻弄される私
(頼むから人前でキスとかやめてください)(人前じゃなかったらいいのか?)(…もうヤだ)(いじけんな、仕方ないだろ好きなんだから)


私の周りではぬいぬいが一番人気(笑)