short | ナノ
『っ、東月くん…!』

ああ、やっぱり居た。
いつもの場所に、いつもの席に私が居ないだけで。
私が名前を呼ぶと東月くんは顔をあげた。

「みょうじ、さん…」
『っは、は…っ』

さっきの場所からここまではだいぶ距離があって、ここまで全速力で駆けてきた。
元々体力のない私は、肩で息をする状態で言葉が出てこない。
東月くんは私の元へ走ってきて背中をぽんぽんっと何度か叩く。

「大丈夫?座れるところ行こっか」
『っ、はい…』

目元が赤くなっていて、泣いてたことがバレバレなのを配慮してくれたんだと思う。
外のベンチにつれていかれた。
寒いのもあってか人気はほぼゼロ。

「寒くてごめんね。でもこっちの方が良いかなって」
『大丈夫…、あの、ね…っ』
「うん」

東月くんはこちらに顔を向けてきた。

笑顔が好き。
最初にお菓子を貰ってから色々喋ったりして
もっといろんな所を好きになった。

もう隠さないし止めない。

『私、東月くんが、好き…ですっ』
「うん、俺もみょうじさんが好き。
実は入学したときぐらいから好きだったんだ」
『へ…?』

一目惚れだったんだ、と東月くんははにかみ笑い。
うそだ、だって、そんな訳ない。

「俺は、好きな子にお菓子を作ってたつもりだったんだけど?」

と今度は悪戯に笑った。
なんてこった。東月くん曰く好きな子にあげていたらしい。
私が言った一言は的を得ていたらしい。なんてこった。

『あ、え』
「最初は気付いてくれないかなーなんて思ってたけどあんまりにも鈍いから」
『っ、だって私なんか可愛くないし、面白くもないし』
「可愛いよ。それに喋ってて楽しかったからもっと好きになった」

ああ、泣いて良いですか神様。

「っわ、泣かないで?」
『っ…ぅ、』

どうやら泣いてたらしい。仕方ない、人生で一番幸せなんだから。
東月くんが腕を伸ばして親指で涙を拭う。

「みょうじさんが好きです。だから付き合ってください」
『っ…』

久しぶりに貰ったものは甘いキスだった。
最初から何もかも奪われてた
(はは、顔真っ赤)(っ、!)(かわい、)


◎バレンタイーン!
まあもう一週間経つけどね!!←