あれから一週間に一度くらいの頻度で東月くんは私になにかを作ってきてくれるようになった。 そして食べながら喋るみたいな。作らないときも喋ったりしてるけれど。 今日はマカロン。あれ、これ餌付け? いやいや幸せですから何とでも。 「おいしい?」 『あ、はい…美味しいですよ』 「それは良かった」 と笑顔で私に言う。その笑顔にいつも通りにきゅんとして、 真っ赤な顔のままマカロンをつまむ。 他の女子生徒さんからの視線が痛いけど気にしない。いや、気にするけど…。 「みょうじさん、どうかした?」 『え、いやなにも!』 東月くんは一体気付いてるのだろうか。物凄い謎だけど。 「ねえ、東月くんと付き合ってるの?」 『いや、付き合ってないですけど…』 ちょっとこのパターンはやばいんじゃないのか…? 人目のつかない場所に連れてこられ四方を囲まれ絶賛文句を言われています。 ははっ、これなんて漫画? 「じゃあ東月くんに付き纏うのやめてくれない?」 『…』 付き纏ってない。そう言ったって自分の好きな人を正当化するに違いない。 私はだんまりを決め込む。 「あんたみたいなのを東月くんが好きになるはずないじゃない。ばっかじゃないの?」 『、』 うるさいな、なんで言うかな。分からせようとしてくれるの。有難迷惑よ。 もう自分で分かってるから。 いつもの席に座って本を読んでいると東月くんが前に座ってきた。 私は上目遣いにそれを確認した。 「今日は何の本?」 『東月くん。あのね、もうお菓子作らなくて良いよ?』 唐突に、そして作ってきてもない今日言うのはどうなのかななんて思ったけど。 東月くんは目を丸くした。そして眉を下げて私に言う。 「…やっぱり迷惑だった?」 『あ、ううん違うの!…とっても美味しかったし』 「じゃあ何で?」 『…そういうのはやっぱり好きな子とか彼女にしてあげるべきかな、って』 違うよ、ほんとは違うんだけど。 ただ、そんな事されると惨めになっちゃうんだよ。 もっと好きになって、でも東月くんは私を好きになってくれはしないと思う。 東月くんにはもっと可愛い子の方がお似合いだ。 だから、ただただ好きな気持ちだけが膨れるだけで悲しいの。 東月くんの作ったもの食べるの美味しかったし嬉しかった。 だけど今日で終わり。 「…あの、さ」 東月くんが何かを言おうとして口を開いたが、 『っもう私、教室に戻りますね!!』 「ちょ、なまえさん!」 遮って走り出した。 後ろで初めて名前を呼ばれた。 嬉しいね。だけど、もう良いよ。これ以上、溺れさせないで。 心臓が止まってしまえば良いのに (ああ、結ばれたいなんてそんな贅沢な) ←→ |