short | ナノ
ぴりりっと携帯が机の上で鳴る。
ちらりと時計を伺うと、いつもの時間だ。

あいつだ、その事実が俺を笑顔にさせるんだからどーしようもない。

「もしもし」
『かな?今、大丈夫?』

俺の事を"かな"と呼ぶのは一人しか居なくて。
そんな何でもない呼び方が俺にとっては特別なんだ。

まあ、…付き合ってもないけど。

間を不安に感じたのか電話の向こうで「かな?」と言う声が聞こえた。
俺は慌ててそれを否定する。

「おう、大丈夫」
『そっか、なら良かった』

安心したような声が聞こえる。

一人だけ別の高校に行った幼馴染。

電話してくるのは相談でも、愚痴でもなくホントに何でもない話。
だいたい相談なら俺より錫也とか月子に相談した方が的確だ。…悔しいけど。

「でな、羊が俺の玉子焼き取りやがってよ!」
『うん、』
「だから俺があいつのおにぎりを取ったら、あいつ何て言ったと思う?
"僕のおにぎり取らないでよ!"だぜ?お前が先にとったんじゃねーか!!ってなるだろ」
『ははっ、そうだねえ…でもかなも取っちゃうから』

「俺は悪くねーよ!」というと『はいはいそういう事にしといてあげるよ』となまえは言った。

『でも楽しそうだね』
「楽しいぜ?だから学園祭とかは来いよな!去年来なかったし」
『ごめんね。でも今年はきっと行けると思うよ』
「そうか、月子も錫也も楽しみにしてると思うぜ」

だと良いけど、となまえは言う。
だいたいあの2人が楽しみにしてないわけがないだろ。

『羊くんにも早く会ってみたいな』
「あいつは面白い」
『うん、知ってる』

俺が前に話したのを思い出したのかくすくす笑っている。

「じゃあそろそろ切るぞ?お前と話してるのがバレたら錫也がキレる」
『早く寝なさい!って?』
「おー、ありゃもう完璧にオカンだオカン」
『オカンじゃない錫也なんて怖いよ』

それもそうか、と言うと2人で笑った。

『それじゃあオヤスミ』
「おう」
『あ、そうそう』

何か思い出したように言う。なんだ?

『かなに会えるのも楽しみにしてるね』
「、!」

そんな爆弾をさらりと落としてあいつは爽やかに
じゃあね、と言ってぶつりと電話を切った。

お前の落として行った爆弾
(っ…、え?なに今のどーいうイミ!?)(っくそ、のやろ)