教室移動の途中で、彼女の教室を通りかかった。 もし居なかったらそのままどこかへ行こう。 やっぱり少しの時間でも君と一緒に居たいらしい。 そう思って教室を覗くと彼女を見つけた。 艶のある黒髪。もうそれすら俺のものにしたい。 俺は病気かなんかですか。 廊下側の席のなまえは隠れてチョコを食べていた。 わあ、いけないんだ。 「なまえ」 『!…なんだ、錫也かあ…』 ビックリしたあ…と安堵した顔を見せた。 夏服に変わった星月学園の女子制服は、 月子が着ているものと別に見える。 「何してるの?」 俺は窓枠から上半身だけで教室に入るような形。 つまり廊下に下半身はある。 『何してるのって…次の授業が始まるのを待ってるんだよ』 「ははっ、お菓子食べるなんていけない奴だな」 『…だって美味しいんだもん』 「太るぞ?」 「う…それを言わないでよ!」 ああ、可愛いな。 お前もともと細いんだからもっと食べればいいんだ。 …まあ、俺の作ったものだけを食べて欲しいんだけど。 …どうやらこの独占病は治らないようだ。 「あ、お前クマできてるぞ。昨日なにしてたんだ?」 少しだけ青黒い目元。ちゃんと睡眠してくれよ。 『えーっと、星を見に…あ、』 「あ、やばい。言ってしまった」というような顔をした。 きっと俺は今笑顔なんだろう。 「前に、言ったよな?」 確認をとるような口ぶりになる。 なまえは顔をそらして苦笑いだ。 『…一人で、夜中に星を見に行かないこと』 「うん。で、昨日星を見に行ったんだ?」 『…昨日凄い星が綺麗だったから、ですね…』 言い訳を言うようになってるみょうじ。 言い訳を聞きたいわけではないんだよ?俺は。 「で、破ったら何するって行ったっけ?」 『…き、きすするって、言ってました』 「その通り。それじゃあ目、瞑って?」 そう言うと少し間が空いて、 『い、いまぁ!?』 「いま」 ほら早く、と急かしてみる。 『ま、待って。ここ教室だし!』 「待たない」 『あ、後で…』 「後ででも良いけど…、寮だったらそれ以上のこともやるかもしれないぞ?」 そういうとぼんっと爆発したように顔が赤くなる。 はは、かーわい。 『せめて…昼休み』 「だーめ。破ったなまえが悪いんだよ?」 『わ、悪かったけど教室ではやめんぅ』 とんっと置くように唇を重ねた。 そしてぺろっと口の端を舐める。口内に甘い味が広がる、チョコの味。 『!、…な、舐め…っ!』 「…チョコ付いてたよ」 にこっと笑うと、舐められたところを押さえて顔を真っ赤にするなまえ。 「さ、俺も教室に行きますかね。じゃあな」 そろそろ移動しなければ間に合わなくなりそうだ。 『す、錫也のばーか!』 「俺は元からなまえ馬鹿だよ?それよりその赤くなってる頬どうにかした方が良いんじゃないかな?」 そう言うと真っ赤な頬は更に赤く染まった。 Vivid cheek (はは、かーわい)(君は俺を夢中にさせるのがどうやら得意のようだ) ←→ |