short | ナノ
うあああ!どうしよう哉太と昼寝してたら遅刻寸前だよ!
哉太の馬鹿!!←

猛スピードで角を曲がる。どんっと正面衝突。相手が持っていたであろうプリントが宙に舞った。

『あっ』

バランスを崩し前に倒れる。完全に倒れたとき下には柔らかい感触と制服っぽいもの。
つまり相手の上にバッチリ倒れてしまった。

『っごめ、』

頭を勢い良くあげたときに口にふにっとしたものがぶつかった。ふに?
ふに?って何だこれ。

目の前には特徴あるぱっつんの髪型。ああ、梓くんだ。って、あれ顔近いな。

ん?ふにって、もしかして、あれ?え?ん?
ある程度感触の正体を予想しながら顔を少しずつ離して行く。

あたしの口があったであろう所は、梓くんの唇の上で。
アレ?あれ?もしかして、へ?

「…キスしちゃいましたね」
『っ、ごごごめんっ!!!』

全力で謝り、全力で梓くんの上から退き、全力で逃げた。
こんなに全力になった日は初めてだ。


結果、授業には間に合ったものの内容なんて頭に入るはずもなく。
ずっと机の上に突っ伏していた

「なまえ?どうかしたのか?」
『錫也…』

顔を上げれば心配そうに眺めてくる天文科の4人。
ちょっと待て。どうかしたのか、って…どうやって説明するんだこれ。

梓くんとキスしちゃった☆ってか。うん、無理だわ。

『や、あの、何でもないよ』
「ほんとかー?お前も月子と一緒で強がるとこあるからな」
「ちょっと、哉太?」
『うん、大丈夫だよ』

へらっ、と笑うと4人とも納得できなかったみたいだけど
渋々自分の席に戻っていった。

体調悪い時とかはすぐに見抜くんだけどこればっかりは、


『「あ」』

会いたくない会いたくない、と思うほど会ってしまう事がよくある。

とりあえず逃げようと思って屋上庭園に行く途中、ばったりと梓くんに遭遇。なんてこった。

「良かった。僕、先輩の事探してたんです」

そう言って笑顔を浮かべた。

「あの先輩、さっきの事気にしてますよね」
『あー…うん、なんかごめん』
「いえいいんです。ただ先輩が嫌だったら忘れてもらっても構いません」
『…』
「ただ僕はたとえ先輩に"忘れて"といわれても絶対忘れませんから、って言いたかっただけです」

とりあえず数秒はフリーズ。動いてたのは心臓と目が瞬きを数回。

「それじゃあ」

そう言って梓くんはあたしを通り過ぎ反対側へ歩き出した。

『え、あの梓くん、それって…っ』
「言いません。自分で考えてください」

自意識過剰なのかなあ。答えが一つしか思い浮かばないんだけど。

『…』
「ああ、あともう一つ。僕と先輩の身長差でこけてキスなんてあり得ませんから。
…狙ってなかったら、の話ですけどね」
『え…』

最初から狙ってましたけど、何か問題でも?
(それじゃ、先輩から言ってくるの楽しみにしてますね)(え、ええええ!!?ちょ、梓くん!?)


―――
梓ってこういの好きそうですよね