「なんですか、これ?」 たった今来たばかりのなまえ。 生徒会室の机のうえにちょんと置いてある箱。 「誉が持ってきてくれたんだ。なんでも宮地オススメのケーキらしい」 そう言うと、なまえは「あーそういやうまい堂新作出たって言ってたなー」と思い出したのかくすくす笑っている。 「どうする?今食べたいか」 『んー…でも月子達のぶん』 「あいつ等はもう食った」 そういうと「えぇ!?」と声をあげる。 『待っててくれないの月子たち…!』 「仕方ないだろ。お前今日来るのか分からなかったしな。 もし来なかったら俺が届ける予定だったんだよ」 『あ、そっか』 「どうする、食べるか?」 俺はメガネを外してなまえに言う。 書類もひと段落したし、こいつも来たばっかだし食って送れば良いだろうなんて事を考えてみた。 『会長はもう食べましたか?』 「俺はまだ食ってない。言っただろ?お前が来なかったら俺が届ける予定だったって。 俺にお前がケーキ食ってる時に何も食うなって言うのか」 『あ、そうでした。すいません』 別に謝らなくていい、そう言うとなまえは少しだけ笑いケーキの箱を開けた。 『わーチョコとチーズケーキだー…』 「お前どっちが良いんだ?」 『あ、…えと会長はどっちが良いですか?』 「俺は残った方でいい」 そういうとなまえは顎に手をあてて考え始めた。 『どうしよ、』 「食いたい方を食えば良いだろ」 『どっちも食べたいから困ってるです!』 「ぶはっ…おま、太るぞ?」 冗談で言ったつもりがなまえは真に受けたようで 「知ってます!」と顔を赤くして怒った。 ウソなのにな。バカだこいつ。 『むー…チーズにします』 「じゃあ俺はチョコレートか、お前チョコ好きじゃなかったっけ」 『好きなんですけど…夜に食べると体重増えるしニキビ出るんですよね』 そう言いながら俺の元へチョコレートケーキを持ってこようとしたなまえ。 俺はその行動を阻止した。なまえは首を傾げた。 「そっちで食うから持ってこなくて良い」 『あ、そうですか?』 納得して持っていたチョコレートケーキを机の上に置く。 なまえはチーズケーキを持ってチョコレートケーキの向かい側に座った。 えええ、何だソレ。俺にお前の向かいに座れってか。 …ああそうだ、こいつ言わねーと分かんない奴だった。 仕方なく俺は用意されていた席の前のケーキを手に取りなまえの横に座った。 『あ、こっちが良かったですか』 「まあな」 『じゃあ私向こうに行きますね』 いや何でだ。おもむろに立ったなまえの手を引っ張り再度横に座らせる。 「動くなよ」 『や、でも、あの』 「俺の隣、いやか」 そう聞くとなまえは一瞬目を丸くして首を横にぶんぶん振った。 それこそ首が吹っ飛ぶんじゃないかってぐらい。 『ち、違います!』 「じゃあ何だ」 『あの…緊張するといいますか、…心臓が止まりそうになるんです』 …何だこいつ。顔真っ赤にさせてそんな事言うとか反則だろ。しかも2人っきりだぞ、こいつ分かってんのかよ。 おいこれ俺襲っても許される気がするんだがダメか。 頼むから自覚といものをして頂きたい。 彼氏としては不安でしょーがないんですけどねえ。 『…動いちゃダメですかね』 「だめだ。いっその事心臓止めちまえ」 『な…っ!し、死んじゃうじゃないですか!』 「人工呼吸で目覚めさせてやるよ」 私は白雪姫じゃないんですけど…、と文句たらたらにチーズケーキを一口食べた。 俺もチョコのセロファンを剥がしてチョコケーキにさくっとフォークをいれる。 『あーこのチーズケーキ美味しー』 「チョコも美味いぞ。いるか?」 そう言うと「え!?あー…でもなあ…」と葛藤している。 ケーキ一つで葛藤なんて可愛いなこいつ。 「ほら、」 『んむぅ!?』 面倒くさくなったので開きっぱだった唇に自分の唇を重ねた。 口の中には入れたばっかのチョコケーキ。 俺の口内にはチーズケーキの味が少しだけ広がる。 「美味いか?」 『…』 唖然としたままのなまえ。うわ、間抜けな顔。 「おーいなまえ?なまえー」 『っ…か、何するんですかっ』 「何って、食いたかったんだろ?食わせてやっただけだ」 『く、口移し…っ』 「あれ?してって言わなかったか?」 そう悪戯に笑いながら言ってみると、なまえは顔を真っ赤にしてこう叫んだ。 『誰もそんな事言ってない!!』 (はは、まあそう怒るなって)(お、怒ってないです!)(へえ、じゃあまたしても)(殴りますよ) ←→ |