『………会長、』 「…」 返事がない。さっきからこの調子だ。 はあ…、と露骨にため息をついたって会長は私を放してはくれない。 会長はぎゅっとまた無言で改めて私を抱きしめ直した。 さかのぼる事約数十分ほど前。 陽日先生と生徒とのじゃあなーというやり取りが響く天文科の教室で、 私は月子たちと喋っていた。錫也くんお手製の美味しいお菓子をつまみながら。 そこへこの人が物凄い形相で天文科の教室に飛び込んできたのだ。 ホント、何事かと思った。吃驚し過ぎて錫也くんのお菓子を落とした。勿体無い事をしてしまった。 だってまるで大事なものを失くして一生をかけて探し出しているような、そんな顔をして飛び込んできた。 そして私の顔を見て、「無事か」と尋ねてきた。 無事かって、月子たちと喋ってて危険に陥る事が何かあるとでも。 ワケの分からない質問に困惑しながら「無事です」と答えた。 そして無言で腕を引っ掴まれて引っ張られる。 後ろを振り返ると月子たちが苦笑いで手を振っていた。 ごめん、と口パクで謝ると月子が代表で答えた。 「頑張れ」と。 頑張るも何も、…何を頑張れって言うんだ…。 そして会長の自室に連れてこられ、ベッドに座らされ、前から抱きしめられた。 そして最初に戻る。 『…会長、黙ってちゃ分かんないです』 「…」 『………一樹さん』 会長じゃなく名前を呼んだ。ねえ、反応してください。 名前で呼ぶと、腕が震え始めた。なんで? 「っ…、ごめん、ホント…弱いな、俺は…」 『…』 私が返事をしなかったからか、会長は矢継ぎ早に言葉を紡いだ。 「っ…お前が俺から離れていくのを視たんだ…っ」 『…』 思い出したのか、会長の腕は私を強く引き寄せる。 初めて、この人の弱音を聞いた気がする。 「…お前が、離れて行ったら…っ、俺は!」 『…会長の星詠みって使えませんねー』 そしてその弱音は実にくだらない。 「な…っ」 『…離れていくと思ってるんですか?』 私が、会長から離れられるワケがない。 常識で考えたら分かる事なのに、どうしてそれぐらい分からない? 「っ、俺はだな!」 『そう思われてたなら心外ですが。 私の好きだという言葉は、…私の事は信じられませんか?』 「…信じたい、さ。だけど…お前は可愛いし、俺は不安なんだよ」 信じればいい。私の言葉なんて簡単に。 私はあなたの言葉なら何でも信じてるの。 大体、私が可愛い事は信じられない事と関係ない。(そもそも可愛くないし) 『不安ならぶちまければいい。私はあなたの彼女です。 重いなら、分けてください』 「っ、」 『私だって、背負えるものくらいあります。 …だから、私を必要としてください』 あなたに必要とされないのなら、私の存在意義なんて小さいものです。 『私、会長が居ないと生きていけませんよ』 君依存症 (…お前、超男前だな…)(…会長は女々しいです)(、…悪かった) ←→ |