short | ナノ
永遠って、あるのかな。

そんな事を俺の隣でぽつりと呟いたなまえ。

「え?」
『え?ああ、永遠ってあるのかなあ、って』

そんな事を言うこの子は学生時代から時々よく分からない事を言う。
今だってホラ、土曜の午後にただ一緒にソファに座って俺は雑誌を読んでたり
なまえは大学の課題を終わらせようとしていただけなのに。

「なまえ?」
『永遠って絶対あるとは言い切れないなー、と思って』
「なんでいきなりそんな事?」
『ほら、ここ』

そう言ってペンでとんとんと叩くのは国語辞書で
指し示す箇所にはこう書いてあった。


えい‐えん〔‐ヱン〕【永遠】[名・形動]

1 いつまでも果てしなく続くこと。時間を超えて存在すること。
また、そのさま。「―に残る名曲」「―のスター」「―に語り伝える」

2 哲学で、それ自身時間の内にありながら、無限に持続すると考えられるもの。
また、数学的真理のように、時間の内に知られても時間とかかわりなく妥当すると考えられるもの。


『死んだら永遠ってないじゃない。そこで断ち切れるでしょう?
じゃあ"永遠に君を愛するよ"って言葉は無意味かな、って思いまして』
「言われてみれば、そうだね。…で、いきなりそこに至った経緯は?」

あー…、とかなんとか言いごもる。
そこまで言ったのなら教えてくれるんだろう?

俺の有無を言わせない笑顔になまえが折れた。

『…錫也が月子にプロポーズするならなんて言うかなって』
「………そこで言う相手が月子になってるのが謎なんだけど」

俺はいま物凄く泣きたい。

自分の彼女が自分以外の人に彼氏が求婚してるっていうのに
一切妬いた素振りを見せないという事実に。

『こういうのは第三者視点で見るのが面白いじゃん』

とか何故か勝ち誇った顔。
雑誌を閉じてなまえに向き直る。

「じゃあなんて言えば納得するプロポーズですか?」
『…それを私が言ったら面白くないでしょ?錫也が考えなきゃ、』

俺がはあ、とため息をつくとふふっ、と笑った。
つくづくお前は予想の斜め上をいく奴だな。昔からホント。

頬に人差し指を当てて楽しそうに想像するなまえ。

『楽しみにしてるね、錫也のプロポーズ。
きっと夜景の見えるレストランとか、んぅ』

想像をぶった切ってやった。

いつまでもお前が上手なのがムカツクから
俺はお前の斜め上をいってやろう。

「なまえが好きだよ、愛してる。だから俺をお前の"たった一人"にして?
俺はお前が俺の"たった一人"だから。
死ぬまで愛してるよ。だから、結婚しよう?」

同棲期間も充分だろう、そう付け足すと彼女は目を白黒させた。

綴った言葉はもしかしたら支離滅裂かもしれない。
だけれど彼女が満足する言葉とは何なのだろう?と考えると言葉は繋がらないのだ。

『…びっくりした。錫也ってシチュエーションとかばっちり考えると思ってたのに』
「お前ばっかり予想外はずるいだろ。で、お返事は?」
『…ごめん、もっと時間を頂戴?』
「…お前それウソだろう」
『あれ、バレた?』

くすくす、といたずらっ子みたいに笑う。
当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだよ?お前の彼氏だぞ。そして未来の旦那様。

「指輪は今度買うからさ」
『んー…』

え、要らないの?
もしそうだったら俺無理矢理にでも買っちゃうから。

何を言うかと自分は黙っていると、なまえはいきなり辞書やノート類を片付け始めた。

「何してるの?」
『今何時?』
「いま?…13時」
『今から買いに行ったって悪くないでしょ?』

ああ、なんだ。
案外君も嬉しいんだね
(…なに笑ってるの)(いや?何でもないよ)((やっぱり君が好きだ))


◎永遠の意味:yahoo!辞書より
錫也を敷くヒロインが書きたくなっただけです。
しかし結婚したら錫也が上を行くんでしょう。良かったね←