ぶすっ、とむくれた僕の彼女。 あれ、えっと、僕たしか優勝して、笑って"おめでとう"って言われるはずじゃないの、これ。 月子先輩は理由が分かっているのか苦笑いを僕に向けてくる。 ええ、何それ、もしかして僕が原因とかそういうこと? 「なまえ」 いつもはこうやって名前を呼べば満面の笑顔で僕の名前を呼んでくれるっていうのに、今日ばっかりは、 『………優勝おめでとう、』 …うん、笑顔で言われればそれはもう疲れが吹っ飛ぶくらいの破壊力だって言うのに 膨れっ面そっぽ向き目も合わせない、ではこっちは笑って"ありがとう"を返すこともできないのだ。 「なに?僕なにか怒らせるようなことした?」 『………何も、してないし、怒ってないし』 …この膨れっ面を誰が怒ってないと思うんだよ、まったく。なに、誰かにガンつけてんの? 「怒ってないとか、嘘ばっか」 『嘘じゃないし』 そして必要以上は口には何も言わない。 ほーんと、意地っ張りなんだから。 「ねえ、こっち向いてよ」 『…やだ、もう何でもないって言ってるじゃん』 「どうして?何でもないって言うならこっち向いてよ」 ぐいっ、と頬を掴んでこっちに向かせる。 「っ、何でもないってば!」 ぱぁん、と思いっきり手を弾かれた。 そしてなまえの体から何かがはらりと落ちる。 あっ、となまえが声をあげ僕はほぼ反射でその落ちた何かを拾った。 「…"木ノ瀬梓様"…なにこれ?」 『っ、それ、他校の子に貰ったの!"梓くんに渡してください"って!』 またぷいっ、となまえはそっぽを向くのだ。 ああ、なんだ。安心した。 「なまえ」 『っ、何でもない。 見てあげれば?渡してきた子可愛かったよ?電話番号とメルアド書いてるって、良かったね、可愛い子に告白され』 「なまえ」 早口にまくしたてあげるなまえの言葉を遮った。 頬にするりと自分の右手を滑らせる。びくり、となまえの体が強張った。 『っ、』 「なまえさ、ヤキモチ?」 『ち、違うし、なんでもない』 こんなとこまで意地っ張り。 そんなとこだって好きだけれど、 「僕だって甘えて欲しいときだってあるんだよ?」 『だからなんでもないってば!そんなんじゃ、ん』 ちゅっ、と僕の唇となまえの唇の上でそんな音がはじけた。 一瞬目を丸くし、とたんに顔が赤くなる。 「そんなの受け取って拗ねちゃうのだって可愛いけどね」 『す、拗ねてないし、いきなりキスしてこないでよ!』 「だって可愛かったんだから仕方ない。で、ちゃんと言いたい事は?」 『っ、…その子、返事どうするの?』 返事。ああ、返事しなきゃかな。 どうしようか、ていうか僕の返事を心配するとかなまえもバカっちゃバカだなあ。 「断るよ、」 『そっかあ…』 心底ホッとした顔もめちゃくちゃ可愛い。 ああ、僕は彼女に翻弄されっぱなしだ。 「僕にはなまえという可愛いくてやきもち妬きな彼女さんが居るんでね」 『っ、だから何でもないってば!』 何でもない、なんて嘘ばっか。 僕には嘘は通じないからね、 (それじゃ笑顔で"おめでとう"を言ってくれると僕は嬉しいんだけどな)(…おめでとう)(…笑顔)(…皆のとこ行こ)(あれ、無視?) After Summerが欲しくてたまりませぬ。ふわああじゅんじゅんマジ天使! 最後梓がちょっと可哀想だ← ←→ |