short | ナノ
どうしてこう、うまくいかないのかな。

「なまえちゃん、今から生徒会?」
『誉先輩…はい、一樹会長に呼ばれちゃって』

眉を下げながら笑うと誉先輩は困った奴だね一樹は、と笑った。

『まあ慣れましたから大丈夫ですよ』
「慣れで済ませちゃうんだね、ふふっ」
『慣れないとやってけませんよ』

歩き出すと誉先輩も隣を歩き出した。
ああ、恋人同士みたいにみえてんのかなあ。

ぼんやりとそんな事思った。

そんな事考えても、空しいだけなんだけどね。

『誉先輩は弓道部ですか?』
「うん。もうすぐ引退だからね、頑張らなきゃ」
『あ、そういえばインターハイ優勝おめでとうございます』

言ってなかったですね、と言うと

「ありがとう。皆も喜ぶよ」
『いえ。あ…そーだ。誉先輩これ弓道部の皆でどうぞ』

差し出したのは学園近くの宮地オススメのケーキ。
生徒会の皆で食べるために手に持っていた。まあでも、いいでしょ。

「え、でもこれ生徒会の皆で」
『いいんです。あたし何もお祝いあげれなかったから、せめてこれだけでも』

そう言っても誉先輩は受け取ってくれない。

『先輩たちが食べてくれた方が嬉しいですし、生徒会の皆にはまた今度買うんで大丈夫ですよ』
「…それじゃあ、ありがたく頂くね」

おずおずとケーキの入った箱を受け取った。
そしてケーキの箱を少しだけ見つめふっ、と口を緩めた。

今頭の中に誰を思い浮かべたのかなあ、なんて愚問はもう浮かばない。
とどのつまり考えるだけ無駄なのだよ、自分。

顔が笑顔を保てているか不安になった時後ろから足音が聞こえた。

振り返ると一樹会長だった。

「なまえこんなとこ居たのか、っと誉も一緒か」
「一樹、後輩に迷惑かけちゃ駄目だよ」
「迷惑なんてかけてないぞ!」
「…自覚がないんだね、」

そして今度は反対側の、誉先輩の後ろから二つの人影が誉先輩を呼んだ。

「部長!ここに居たんですか」
「あっ会長となまえちゃん」

宮地と月子。どっちも弓道着を着ていた。

「よお、月子と宮地」
『月子たちこれから部活?』
「うん、なまえちゃんは生徒会?」
『うん、一樹会長に付き合ってあげるの』

おい、と隣で聞こえた気がするけど、空耳空耳。

「あ、2人とも。なまえちゃんにケーキ貰ったんだよ」
「!ほんとですか!」
『宮地の好きな店のやつだよ。まあ小さいですけど優勝祝い?』
「ううんありがとう!なまえちゃん!」
「ありがたく頂く。あ、部長そろそろ行きましょう」

宮地の一言に2人がはっとしてあたし達に手を振り歩き出した。

姿が見えなくなってから俯いた。
隣の一樹会長がぽんっ、と頭を叩くように撫でた。


どうしてこうもうまくいかないんだ。

どうしても嫌いになれない、好きが疼いて止まらない。
誉先輩、好きなんですよ。実はね。

嫌いになれないあたしなんて
死んじゃえば良いよ、
(…会長、恋で苦しいんですかね)(お前が死にたいほど苦しいと思ったならそうなんだろ)


―――あとがき
悲恋って書きづらいんですね!私には向いてない