short | ナノ
『寒いねえ』
「そうだな、マフラーだけで寒くないのか?」

ぐるぐると首の回りに巻かれた赤と黒のボーダーマフラー。

『うん、大丈夫。ていうか宮地くん何もしてないじゃん』
「む、俺は大丈夫だ」

そう言いながらも頬は赤く染まっている。寒いんだろうなあ。
一緒に巻く? そう聞くと

「な、何言ってんだ!そんな事出来るわけ、」
『だよねー』

からかっただけ、と笑いながら言うと宮地くんは拗ねてそっぽを向いてしまった。

「…俺をからかうな」
『ごめんね、だって可愛いんだもん』
「可愛いとか言うな!」

んじゃあ面白い、と言い換えると宮地くんはもう良い、と諦めたようだ。

『こんなあたしを好きになる宮地くんも大概だよねー』
「…」

右手に何かが掠った。なんだこれ。右側にはそっぽを向いた宮地くん。
てことは掠った何かは宮地くんの何かという事になるのだろうか。

ワケが分からずに居ると確かめるように人差し指だけ絡めてきた。

隣を見ると未だにこっちを見てくれない。
それは拗ねてるのか、それとも照れてるのか。

…あ、耳赤い。

『宮地くん』
「…なんだ、」
『人差し指だけっていうのは、ちょっと物足りないかな』

人差し指を一旦離してちゃんと全ての指を絡める。
少し宮地くんの手が引いた気がするけど気にせず所謂恋人つなぎというものしてみた。

「っ」

反応を見てみると、やっぱりこっちは見てくれない。
でも、少し躊躇しながらゆっくりと指を絡めた。

応えてくれた事が嬉しくって、

『…宮地くんと居るとさ、こっちが恥ずかしくなってくるんだけどどうしよう』
「うるさい!」
『心臓に悪いよねえ、ホント』

マフラーで口元を隠す。…緩みきってしまった口元は戻らない。

「…手を、繋ぎたかっただけだ」
『それ以外に思惑があったなら逆に吃驚するよ。宮地くん』
「お前はもうちょっと素直になるとかできんのか!!」
『あいにく、これが性格なんでねー。宮地くんあたしの性格嫌い?』

そう聞くと、いやっそうでもないが…っと詰まらせながら答えた。
ああ、何か彼氏と彼女の立場逆転しちゃってる気がするよ。

まあ、楽しいから良いんだけどね。

『宮地くん、宮地くん。こっち向いて』
「…今度はなん、」

途中で宮地くんの言葉が詰まった。というよりあたしが詰まらせた、いや塞いだ?
手段は想像にお任せする。


「なあ…っ///」
『…これだったらマフラー一緒に巻いとけば良かったねえ』


マフラーがあったら顔隠せるもんね
(…お前と居たら心臓がいくつあっても足りん…)(それは光栄です)(褒めてないっ!というかこういうのは普通男から…っ)(え?宮地くん出来るの?)


宮地くん可愛いよね、って話