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赤ちゃんが、できました。

ソファーで寛いでいた夫である錫也にそう報告したら、
錫也は目をぱちくりさせて

「………、マジで?」

ああこりゃ相当混乱してるわ。この人"マジで?"とか使わないし。

『うん、今日…妊娠検査薬使ってみむっ』

ばふっ、という音と共に強く抱き締められた。

「っ…、生んで、くれるか…?」
『………堕ろせとか言われたら殴るつもりだった』

万が一そう言われたとしたら錫也とを殴ったあとに別れて一人で育てるつもりだった。
そう言うと錫也は、そんなこと言うわけないだろと少し頬が膨れた。

『ごめんって。…生んで、良いんだよね』
「辛いとか痛い思いをお前にさせるけど、
…俺とお前の子供を生んでください」
『ん、…がんばります』



「洗濯物とかはもう干してるから、もし雨が降ったりとかしたらいれといて。
…まあ今日は天気予報晴れだったから大丈夫だと思うけど…。
あとお昼ごはんはもう作ってラップしてあるから、温めて食べるんだぞ?
食器とかは洗わなくていいから水につけといて」
『だから大丈夫だって…』

というのを毎朝毎朝言うようになった。
しかも一息だ。どんだけ肺活量あるんだよ。

「お前の体になにかあったら嫌なんだって…。だから安静にしといてくれよ?」
『それは分かるけど、過保護にも程があるでしょーが…』
「…絶対安静。良いな?」

念を押したあと、私にキスして錫也は仕事に行った。

『もう…、』


いくら何でも、過保護すぎるんじゃないか?

まあこれでも少しは軟化したほうだ。
最初のころはお前が休暇とるなら俺もとる、と言っていたのだから。
それは後々お金が要るようになるから錫也には仕事を頑張ってくれないと困る、と宥めた。

それでも昼休みには必ず電話があるし、
たまに義母さんが訪ねてくる。
もちろん訪ねてきてくれるのはとても嬉しいけど、それも大方錫也が頼んだのだろう。

少しは家事とかで運動しなきゃいけないんだけど。
多分怒られるんだろうなー…。
ピッピ、と携帯のアドレス帳からひとつの番号を引っ張り出した。

「もしもし?」
『月子、助けてよー…』

四年前に結婚していった親友月子ちゃんにヘルプミーをだした。

『かくかくしかじかなの…』
「あはは!錫也らしいね、でも…妊婦さんって適度な運動しなきゃ駄目なんだよー?」
『そうなの!運動しなきゃ太っていくだけなんだよー…』
「なまえちゃんは太ってないよ!」

いえいえ太ってますよ、と言おうとしたら電話の向こうで「ままー?だれとおでんわ?」と声がした。
月子が私とかには聞かせないような優しい声で「なまえおねえちゃんよ」と言うと
「かわって!かわって!」と可愛らしくおねだりしていた。

「もしもしなまえちゃん?」
『うん、日向元気?』
「うん!そうだなまえちゃん!ヒナタね、よんさいになるの!」

ちらっと視界の端に映っていたカレンダーを確認すると
たしかにもうすぐ日向の誕生日だ。

『おっもう四歳かー…誕生日プレゼントなにが良い?』
「えっとね、えっとね」

嬉しそうに"えっとね"を連呼しながら最終的に決めたのは
8時半から放送中のアニメの変身グッズだった。

『楽しみに待っててね』
「うん!」

日向が元気よく返事をしたら、今度は電話相手が月子に戻った。

「ごめんね、なまえ…」
『なにがごめんなの?日向に喜んで欲しいんだからごめんも何もないの。
まあ…強いて言うならありがとうの方が嬉しいかな?』
「なまえ…ありがとう!」

それから一時間ほど電話をした。
切ってディスプレイを見ると、電池が切れそうだ。
やばいやばい。充電コードを引っ張ってきて携帯にさした。

うーん…暇だなあ…。
ぐみょーんとソファーで体を伸ばしていると机のうえの封筒が目に飛び込んだ。
ソファーから飛び起きて時計を確認。1時前。

『…あれ、払い込み今日の1時までじゃ…!?』

そうだ、確かにそうだ。
急いで封筒をひっつかんで家を出た。
(焦っていても鍵を閉めるのは忘れなかったが)


よかった、間に合ったー…。
はああ…、と安堵のため息をつきながら帰路についた。

閉めるのを忘れなかったシリンダーに鍵をさして回す。

『…ありゃ?』

閉まった。なぜし。
もう一度回すと今度は開いた。あれえ?と首を傾げながら扉を開くとぽすん、となにかに当たった。

え、玄関開けてすぐのとこに物なんて…。

「っ、心配…した…」
『…、錫也……?』

返事はなく更にぎゅうっと抱き締められた。

「お前、電話、でないし…!」
『ああ…置いてっちゃった』

ごめんね、と謝ると
帰ってきたから良い、と少し膨れた顔で言う。

「なんのための携帯だと思ってるんだよ…」
『携帯する電話です』
「携帯してなかったら意味ないだろ!それはただの電話だ!」

こんなアグレッシブな錫也は付き合って以来初めて見るかもしれない。
なんだか、

『可愛いなあ…』

心のなかで呟いたつもりだった。
どうやら口から出ていたようでぴきりと錫也の顔が凍る。

『す、ずやさん…?』
「可愛い、なんて言う余裕が…あるんだな?」


君のことになると
僕は余裕なんて
微塵もないというのに

(ていうか、仕事は…)(いまは昼の休憩中)


◎ゆうさんリクエスト
妊娠主人公に異常なほど心配する過保護な錫也 ver.べたあまー!!

だいっっっっぶ錫也さんが誰これ状態ですねアハッ!(°∀°)←
しかも出番あんまりなくてごめんなさいorz←

でも絶対こんな感じだと思うんだ…
ただ私に文才がないだけで…!
だから誰か書いてください←

月子が誰の嫁かはご想像にお任せします^^

ゆうさんリクエストありがとうございましたー!(*´∀`*)



2011.07.08 望


君のことになると




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