やばいどうしようああもう私最悪最ッ低。
ぎゅっと自分の左手を固く握る。 その左手の薬指には、いつもあるはずの物がはまっていない。 どうしよう、どうしよう。寝る前はちゃんと在ったのに。
『っ…』
ようはつまり、琥太郎さんから貰った婚約指輪を失くしたのだ。 最悪。指輪を失くす嫁がいったい何処に居るって言うの。
自分の探した場所はまるで空き巣が入ったようになっている。 ああ後で片付けなきゃいけないな。
『どうしよう、どうしよう…』
怒られる?呆れられる?最悪…別れられる? 頭の中では最悪の事態が先ほどからエンドレス。
やだ。そりゃ失くした自分が悪いのだけれど、やだよ。
諦めない、絶対。泣きそうになりながらもまだ探してないところを探し始めた。
「ただいま…って、お前どうしたその顔…」 『…おかえり、なさい』
結局見つからなかった、どうしよう。部屋も片付けてないし。
『あの、…っ』 「?どうした」 『っ、…ふ、ぇっ』
泣いたら、ダメだろう。めんどくさいって思われること間違いなし、だ。 琥太郎さんも驚きで目を丸くしている。 それでも涙は都合よく止まらないわけで、私は目元を押さえて嗚咽をあげるしかできない。
『、ごめ、なさい…っ!』 「ちょ、…どうした?何があった?」
ちゃんと言ってみろ、と言いながら琥太郎さんはしゃがんで頭を撫でる。 嗚咽が混ざりつつも「指輪を失くした」と言うと、
琥太郎さんはまた目を丸くして今度は笑った。 なんで?どーして?大切じゃないの?頭のなかにはハテナがたくさん。 驚きで涙も引っ込んだ。
『琥太郎さん…?、』 「ふは…っ、すまんすまん。 あのな、俺の指輪が結構汚れて業者に頼んで洗ってもらったんだよ。 それでついでにお前のも頼んだんだ」
ほら、と鞄に手を突っ込んで出したのは大きめの指輪が一つと小ぶりな指輪が一つ。 どちらも買ったときのように綺麗になっている。
「言ってなかったな、そういや」 『っ〜〜〜…良かったあああ…っ!!』 「悪かった悪かった」
ぽんぽんっと頭をたたくように撫でられた。
『すっごい、探したのに…っ』 「あー悪かったなあ」 『琥太郎さんのばかあ!』
ぺしりと頭を叩く。これぐらいやらせてくれなくちゃ気がすまない。
「悪かったって。ほらはめるから手出しなさい」 『………』 「………あー、もうすまんって。俺がお前のそういう顔に弱いの分かっててやってんのか?」
可愛い顔が台無しだぞ、と言いながら膨らませていた片頬を指でぷすりと刺される。 空気がぷしゅっと抜けた。
『可愛くなんて、…機嫌とりですか?』 「おいおい…、そこまで疑われなきゃいけないのか?」
だって可愛くないし。 そう言うとちゅっとおでこにキスが落とされて、
「俺の奥さんは可愛いぞ。分かったか?」
くっそ、………相変わらずかっこいいんだから!もう三十路のくせに…! にやりと不敵に笑う顔に、顔が火照る。
『………部屋、片付けてないですよ』 「…まあ、俺のせいでもあるから手伝うよ」 『…お願いします』
「…荒れてるなあ」 『だ、って…何処にあるかホントに分かんなくて』 「いや別に怒ってないからな。 むしろ必死に探してくれたみたいだから嬉しいぞ」
いまもむかしも (変わらず)(かっこよくて優しくて、かつ甘くて)
◎なゆみさんリクエスト 星月先生とめちゃくちゃ糖度高めの結婚生活 でしたー^^
あま、…甘いっ!?(´゜Д゜`) っとリアクションを頂きそうですが今の私にはこれが限界ですアハッ←
二人で仲良くイチャコラしながら後片付けやってりゃあ良いよ←
2011.08.09 望
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