50000 | ナノ


「俺は………、お前とは付き合えない」
『教師と生徒だから、っていう理由ですか、?』

そう言うと前に居る直獅先生の顔が歪んだ。
それは、肯定ととらえていいんですよね?
ほんと、顔に出やすい。そんなところも、好きだったけれど。


「みょうじの気持ちは、嬉しい。けど、」
『だったらもう良いんです。わたし、直獅先生に告白して困らせたいわけじゃないんです』

それでもね、ほんとのほんとは。

教師と生徒だから、なんてありきたりな理由じゃなくて
俺はお前が嫌いだ、とか別に好きな人が居るとかそんなことを言ってほしかった。

年齢と生徒っていう地位を憎むしかできないじゃないか、先生。

『それじゃあ私帰りますね』
「みょうじ、」
『さようなら!』

何かを言おうとした直獅先生の声を遮って、私は教室を飛び出した。
後ろから直獅先生の呼び止める声が聞こえたけれど、聞こえないフリをした。

だって泣いてるのが分かったら、直獅先生は謝るでしょ?
謝られたって、虚しいだけなの。



走り疲れて、階段の隅でへたれこんだ。
背中を丸めて足を抱える。泣き顔なんて誰にも見られたくない。

『っ、ふ…!』

叶わないって、分かってた。
だって直獅先生は教師で私の担任で。
でも、ほんの少しの奇跡に賭けてたの。

「みょうじ?」
『っ、…こた先生…』

私の名前を呼んだのは、こた先生だった。
私の顔を見た瞬間こた先生は少し目を丸く開いて、はあ…とため息をつきながら「直獅のやつ…」と呟いた。

こた先生凄い。よく顔を見ただけで分かったな…。

「…保健室行くか」

そう言って私にばさっと白衣をかけてそのままひょいっと私を抱き上げた。

「顔、見られたくないんだろ?それで隠しておけ」
『はい…』

ありがたくその思いやりを受け取って白衣をぎゅっと握りしめた。


「…フラれたのか」
『…、はい』

保健室に来るまで涙は引っ込んでいて、こた先生に事情を落ち着いて説明することができた。

『…教師と生徒だから、って言われました。
でもそんなこと言われたら諦めきれないじゃないですか、』
「…みょうじ、」
『っ、ばかみたい…』

勝手に期待して、フラれて泣いて、それで諦めきれなくて。
こんな思いをするくらいなら好きになんてならなきゃ良かったのに。

「…みょうじ、そんなこと言うな」
『っ…』
「直獅を好きだと思ったのは紛れもないお前の気持ちだろ?
それを否定してどうするんだ、お前自身を否定してるのと同じことだろ?」

でも、続けようとした言葉に足音が重なった。
こた先生が少し慌てて私を空いていたベッドに突き飛ばしカーテンを閉めた。

いきなりのことで私はされるがまま。
いったいなんだっていうんだ。

目を白黒させていると保健室の扉が開いた。

「…琥太郎センセ、居るか?」

その声は…大好きで、でも今は一番聞きたくなかった声。
思わず体が固まった。

「おー、どうした直獅。そんな世界の終わりみたいな顔して」

こた先生はまるで私が居ないように話を進めていく。
完璧に、出るに出られない。

「………泣かせた、」
「………すまん、主語がないと俺はエスパーじゃないから分からん」
「………みょうじを、泣かせた」

はあそりゃまたなんで、としゃあしゃあと言うこた先生。
なにこれ、私のはなし?

呆然としていると、直獅先生は泣かせた事情をこた先生に話していく。
(その話は私がもうしていたわけだが)

「…もしばれたら、俺もみょうじも辛い。
俺はまだ良いけど、みょうじの進学や就職先に影響が出るのが一番怖い」
「………だからお前はフッたのか」
「俺のせいでみょうじが傷付くのは見たくないんだ」

ドンッ、と何かを叩いたような音が響く。見えないだけに肩が大仰に跳ねる。

「アイツが傷付くのは見たくない?笑わせるなよ。
お前が断ったからアイツが泣いてるっていうのに?
それとも、それは傷付けてないとでも言うのか?」

初めて聞く、こた先生がこんなに怒っているという声。
叫んでいるわけじゃない。呟くように、でもそこには有無を言わせない迫力が存在する。

「っ、…あいつは、俺と居ない方が幸せになれる」
「…じゃあ、俺が貰っても良いんだな?」
「は…?」

コツコツと足音がこちらに近付いてきて
シャッとカーテンが除かれ、私を隠すものがなくなる。

「………みょうじ、!?」
『な、おし先生』
「ちゃんと考えて言え。
お前の幸せは何なのか。誰と居るのが幸せなのか」

そんなこと考える必要なんて、微塵もない。

『直獅、先生と居たい…!』
「っ、」
『勝手に…っ私の幸せを決めないでください、
だって…一番すきな人と居れるんですよ、?』

それがどれほど幸せか。
一度止まっていたはずの涙が簡単に溢れだす。

「………みょうじ、ごめん」
『っ、…振られてもすきでいて「そうじゃなくて!」

いいですか、そう聞こうとしたら大声で遮られた。
なんで?それすらもダメなの?

「そうじゃなくて、」

そう言う直獅先生の顔は涙で滲んでいていまいちよく見えない。
そうじゃないならなんなんですか。

そんなことを思っていると直獅先生が近付いてきて、

「俺も………みょうじのこと好きだ」

頭上で言われたことが理解できなくて、
でもぎゅうっと抱き締められてるこの感触とか暖かさとかそんなのは全部きっと紛れもない本物で。

「泣かせて、ごめんな。
………でもお前が俺と居るのが一番幸せだって言うなら、もう隠さないし誤魔化さない」

お前が好きだ。
そろそろと直獅先生の背中に腕を回す。

『ほんと、?』
「ああ、俺はなまえが好きだ。誰にも渡さない」

その言葉と共に背中に回る腕の力が強まった。
幸せは君の隣
(まったく世話の焼ける奴らだよ…)((すいません…))


◎直獅でヒロイン視点の切甘で片思い→両思いでした^^
まあ…片思いだと思ってたら両思いだったみたいな感じになってますがどうでしょう!←

琥太郎先生は2人からの相談を受けてましたw
こいつらさっさとくっつけよ、みたいな事思ってりゃ良いと思います^▽^

リクエストありがとうございましたー!

2011.08.19 望


幸せは




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