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熱と



ごほっ。
独りの部屋に自分の咳が響いた。

昨日、プールで濡れたままずっといたのが原因だろう。

はあ、とため息を一つついて、布団に潜り込んだ。

なまえには移るといけないから来るな、とメールしておいた。
だから、それでいいはずなに、

「(一緒に、傍に居て欲しいなんて…)」

同じくらいの、来て欲しい気持ちと来て欲しくない気持ち。

来て欲しい気持ちを閉じ込めて、目を瞑った。
睡魔は直ぐに襲ってきた。



「ん、………は、?」

だいぶ寝た気がする。
いやそうじゃなくて

「(なんで、なまえ…?)」

僕の手を握りながらベッドに頭を乗せてスヤスヤ眠るなまえ。

来るなと言ったのに来たことに怒るべきなのだろうけど、

「(やばい、顔。にやける…)」

誰も見てないのに口元を左手で押さえた。

顔のにやつきが収まり、口元を押さえていた左手をなまえの頭に置く。

『ん…。あ、梓おはよう』
「、」

ふにゃりと笑うなまえ。跳ねる心臓。

「来るな、って言ったじゃんか」
『で、でも…、だって、』

心配だったんだもん…、と眉を下げて言う。

あーもう。
そんな風に言われたら

「仕方ないなあ…」

許すしかないじゃないか。しかも地味に嬉しい。
あー、なんか負けた気分。悔しい。

『梓大丈夫…?』
「…まだちょっとだるいかな」
『ほんと…?』

上目遣い気味に僕を見上げる。
使う相手さえ間違ってなければ女の子の最強の武器だ。

、くそ、そんな可愛い顔、僕以外に見せないでよ。
沸いてくる独占欲。いつもより強いのはきっと熱のせい。

『梓、なんかして欲しいことある?』

だから、そんなこと言っちゃ駄目なのに。

『なんでもするよ!』
「…ほんとに?」
『うんっ』

キスして、頼んでみようかななんてちらりと掠めるけど
移るのはイヤなので却下。

「…、抱きしめて」
『そんなことで良いの…?』
「良いよ」

案外すんなり通った我儘。
なまえはベッドに座り僕をぎゅうっと抱き締めた。

『ふふ、梓かーわいー』
「うるさい…」
『今日はいっぱい甘えてね』
「ん、なまえ…好きだよ」
『へ、』


熱と愛言葉で染まる頬
(…なまえ、顔赤いけど照れてるの?)(ふ、不意討ちは反則!)





あとがき


メイさんリクエスト「梓と甘々」でした

甘々…(´・ω・`)?
甘々仕事しなさいどこ行った

嘘ですごめんなさい

梓は熱がでると甘えたくなるような子だと私が嬉しいだけです

メイさんありがとうございました!



2011.03.21. 望

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