「やばいなまえ!さっきの授業のノートとるの忘れてた!」 『どうしよう弥彦くん!私も忘れちゃった!』 「宮地ぃ!」 弓道部繋がりで白鳥に呼ばれる。 なんとなく次にくる言葉が予測できた。 (というか普通に考えてノートをとるのは忘れないだろうに…) 「…なんだ」 「ノートを貸してください!」 土下座する勢いで頼み込まれる。 はあ、と溜め息をつきながらもしまっていたさっきの授業のノートを取り出した。 もちろん今度はちゃんととれよ、と釘をさすのを忘れずに。 「あざーっす!!」 うきうきとノートを携え自分の席に戻っていく白鳥の背中に そのお礼の仕方はどうなかならんのか…と呆れていると 『あの宮地くん…』 控えめに俺の名前が呼ばれた。 呼んだのは白鳥の幼馴染みの(確か)みょうじ。 『私も、借りていい?』 「…良いぞ、だが今度からちゃんととれよ」 『ありがとう!!』 にぱりと笑って、白鳥の方へ駆けていった。 ファーストコンタクトはこんな感じだった。 『おはよう!宮地くん』 「む、おはよう」 あれからなんとなく関係は続いている。 みょうじはなんていうか、小動物みたいだ。 よく転ぶ･よく食べる･よく動く等。 放っておけない、というのが正しい。 『きゃっ』 ほらまた転んだ。(しかも何もないところで) そして決まって頼るのが、 『弥彦くん、捻った…!』 白鳥だ。 (頼りがいがあるかはさておき) 「だ、だ大丈夫か!?ほ、保健室行くか!?」 『ん、…肩貸して』 そう白鳥に頼んで二人で教室を出ていった。 こういうことが星座科教室で度々起こるため、 「なあ、あいつらって付き合ってんの?」 「え、そーなの?あーでもぽいよな」 「白鳥に彼女が居るなんて!!」 というようなことが囁かれている。 その話題が出るたび、俺はなんだか面白くないというか、楽しくないというか、そんな気持ちになる。 なんでそんな気持ちになるのかは分からなかった。 『あっ、宮地くん』 「む、みょうじか」 インターハイのために一人で自主練をしていると、弓道場の扉が開いた。 顔を覗かせたのは 未だに謎の気持ちが分からないままの原因であるみょうじだった。 「どうした?白鳥なら居ないぞ」 言って何故だかちくりと痛んだ。どこと言われれば心臓周辺。 『あ、弥彦くんじゃないから良いの』 「む、そうなのか」 『見学してて良い?』 「それは構わないが…」 じゃあなんでこいつは弓道場に来たんだ? 疑問に思いながらもまた体を的に向けて、弓を引いた。 そろそれ辺りが暗くなってきた。 切り上げるか…と思い体の向きを変えた、ら 「…みょうじ!?」 『お疲れ様ー』 にこりと笑いながら弓道場の隅で正座していた。 か、帰ったんじゃなかったのか…!? 俺の記憶が確かならこいつが来てから1時間ほど弓を引いていた。 「お前…ずっとここに…?」 『え、うん。あのね』 そう言いながら傍らから取り出したのは 「………なんだ、これは?」 『シュークリーム!宮地くん甘いもの好きだって聞いたから…東月くんに教えてもらって作ってました』 えへへ、とはにかみ笑い。 『宮地くん毎日自主練してるっていうから、無理しちゃダメだよ?』 「あ、ああ…」 『今日、渡したかったから待ってたの』 バカか!?それだけなら何で1時間も居るんだ!?だいたい今は暗いし夏だからといって寒いし(以下略) 普通は怒鳴ってたとおもう。いや間違いない。 でも、嬉しすぎて 「…有難う」 『っ…わ、笑った!?いま宮地くん笑ったよね!』 「む、そんなことはない!!」 いや笑ったやったー!仏頂面を笑わせたー!とか能天気に叫んでいる。 『これからは宮地くんを笑わせることを目標にしよう!うん!』 「なんだその目標…」 呆れるが、口角があがったことは否めない。 『あ!インターハイ頑張ってね、私応援してるから!』 ―――あ、分かった、かもしれない。謎の気持ちの正体が。 笑顔を見るとふわりと心が暖まって、 白鳥との噂を聞くと嫌な気分になった。 つまりは、恋慕とかいうやつではないかと。 『じゃあ私帰るね!』 良い笑顔でくるりと踵を返し、弓道場の扉の方へ向かうみょうじ。 咄嗟に(というかほぼ反射で)手を掴んでしまった。 「あ、…その、暗いから送っていく!」 『え、でも』 「いいから待ってろ、直ぐ着替えてくる」 『え、悪いよ…』 「いいから、…俺を頼れ」 芽生えた独占欲と恋心 (そのなんだ、…手、貸せ)(え?)(転んだら困るだろっ貸せ!) あとがき ヒナさんリクエスト『宮地 白鳥の幼馴染みで切甘』でしたー (詳細なリクエストは割愛) 切甘…?(´･ω･｀) いやうんなんかごめんなさい(逃) せっかく細かいリクエストを貰ったのに なんだかぶち壊した気がしますはい← ヒナさんリクエストありがとうございました!! 2011.03.28 望 |