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フェミニスト



※主人公は「一度だけ」のヒロインで、いろいろ捏造してます


ああ、どうしよう。
きっと今、最大級のピンチだ。

前に広げたたくさんの服。クローゼットは空に等しい。

顎に手をあて真剣に考えてみる。
…ああ、こんな事なら月子先輩に錫也先輩の好みを聞いておけばよかった…!

初デートってなに着ていけばいいの!?

上は決まっている。というか、いつも同じようなのしか着ないからあんまり悩まない。

問題なのは下である。
選択肢としては、いつも通りのショートパンツか、あんまり穿かないスカート。

『んー…』

ちらり、と時計を確認するともうそろそろ着替えないと遅れそうな時間だ。

…やっぱり、好きな人には出来るだけ可愛い姿を見せたい。
たとえ、元が悪くてもだ。

スカートを選び、踵の低いサンダルを履いて、急いでバスの停留所まで早歩きで向かった。



『錫也先輩!』

もう錫也先輩はバスの停留所に居た。
私の姿を見て一瞬固まり、いつも通りの笑顔を見せてくれた。
…やっぱり、似合わないかな。

「おはよう」
『お、はようございます』

付き合って早8週間目突入。
それでもやっぱり錫也先輩の笑顔はドキドキするものだ。

「今日はスカートなんだね」
『あ、…似合わない、ですかね』
「何言ってるの。可愛いよ、似合ってる」

お世辞でも嬉しい。ほっと胸を撫で下ろす。
そこで丁度バスが来て、二人で乗り込んだ。


もう時間が時間だったので、錫也先輩の選んだところで昼食というものを食べた。

そしてそこからが本題である。

「行きたいところある?」
『え、と…錫也先輩は?』

何処に行きたいかなんて決めてない。

そう聞くと俺はなまえが行きたいところで良いよ、なんてわあフェミニストな回答。
フェミニストがなにかよく分かんないけど!

『じゃあ、…何処にしましょう』
「ははっ、じゃあブラブラ歩こうか」

はい手、出して。なんて爽やかに錫也先輩は言って、
私はその手を遠慮がちに握った。

錫也先輩の手は意外とがっちりしていた。
帰りに繋いでいたりするけれど、やっぱり心臓が死にそうだ。やっぱり慣れないものには慣れない。


『あ、これ可愛いー…』
「ん?どれ?」
『っ!』

私が歩いてる途中に気になった雑貨屋に入ってみた。

あんがい可愛いものがたくさんある。何でも最近オープンしたらしい。
今度月子先輩と来てみようかな。

なんて思いながら雑貨屋さんのなかを徘徊していると、私好みのネックレスを見つけた。
独り言で呟いていたつもりだったのに、肩越しに錫也先輩の顔が現れて思わずネックレスを落しかけた。

『え、あ、…これ、です』
「なまえってこういうのが好みなんだ」
『しんぷるいずざべすと!ですよ!』

そういうと錫也先輩は「なまえらしいな」と笑って私の頭を撫でてくれた。
そして「それと発音はSimple is the best.ね」と綺麗な発音で教えてくれた。

あれ、錫也先輩って日本人じゃなかったの。

私が値札を見て棚に戻すと、錫也先輩が買わないの?と聞いてきた。

『あー…今月ピンチなんですよね』
「そうなのか?じゃあ、他のもっと値段の低いやつ見つけるか?」

そういわれると見たくなるのだけれど、時計を確認するともう3時頃だ。
時間が経つのは早いなあ、なんて思ってるんだけど、
それよりなにより、

『もうそろそろおやつ食べたい…です』

甘いものが食べたい。
控えめにそう深刻してみると、錫也先輩はぶはっと吹き出した。

『な、わ、笑わなくたって良いじゃないですか!』
「ははっ、ごめん。なまえらしいなあって思ったらなんか笑えてきて…」

そう言いながらくくっと笑っている。

「分かった。この辺に美味しいケーキバイキングのお店知ってるからそこに行こうか?」
『けーきばいきんぐ!』

目が条件反射で爛々と輝いた。はっ、と思ったときには後の祭り。
錫也先輩はまた爆笑していた。

若干涙の浮いた目で私に笑いかけじゃあ行こうか、と手を差し出した。

この後、その噂のケーキバイキングのお店でケーキを食べてまた目が輝いてまた錫也先輩に笑われた。
そして、錫也先輩笑い終わった後、そんな私を見て「はは、可愛い」なんていうからケーキをふきだしかけた。
さ、さすがふぇみにすとだぜ…!


『んー!』

バスを降りて腕を伸ばす。もうあたりは少しだけ薄暗い。
錫也先輩は自然に私の手をとる。少しだけ慣れた。

『今日は楽しかったです!』
「それは良かったです」
『…錫也先輩は?』

少し不安になった。もしかして、私だけ楽しかったパターンとか今更なしだ。
そんな私の不安を打ち消すように錫也先輩は私の頭を撫でながら、

「もちろん楽しかったよ」
『よかったあ…!』

そしてそこで丁度寮の前についた。
名残惜しけど、この手を放さなきゃいけない。

『あ、』「あ、目瞑って?」

めを つぶれ?

訳が分からなかったけど、錫也先輩が急かすから私はとりあえず言われたとおりにした。

『すずやせんぱーい、なんですかー?』
「…」

あれえ?なんか、静かなんだけど。
え、なにこれまた笑われるパターンかもしかして!?

錫也先輩、と言おうとしたら、首になにかひやりと冷たいものが触れた。
思わず変な声があがる。

「あ、ごめんな。吃驚した?」
『いや、あの…目、開けて良いですか?』
「うん、良いよ」

ゆっくり開いて首の辺りにある冷たい感触のものを探る。
あれえ、これって

「実は、最初からなまえに似合うと思ってて買ってたんだ」
『え、あの…』

混乱する私に錫也先輩は「うん可愛い」なんて言っていた。

君限定フェミニスト
(あの、ありがとうございます)(いえいえ。なまえが喜んでくれたら嬉しいです)




あとがき

リオさんリクエスト「一度だけヒロインと錫也の甘々な番外編」でしたー

はいgdgdでしたねすいませーん!(スライディング土下座orz三

ちょっと解説してみると
実は、錫也は尚が買おうとしていたネックレスをすでに買っていて
内心買わないか凄いヒヤヒヤしていました。

ちなみに目瞑ってと言って尚が目瞑ったときに
錫也はキスしたい衝動にかられました。はっはっは!
なけなしの理性で頑張っていた錫也でした、拍手!←

リオさんリクエストありがとうございましたー!


2011.03.04 望

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