lonely lonely | ナノ

少しだけ
Side Suzuya

「どうしたんだろう…、ハルキちゃん」

授業の合間の休み時間に月子は同じことを繰り返し言う。そりゃ気になるけども。

「誰だって怒る事だってあるさ」
「でも、一樹会長だよ?あの二人って私の知ってる限り接点なんてないもん。
それにハルキちゃんって怒っても錫也みたいに笑顔で追い詰めるタイプだと思ってたんだけどなあ」

反論しようとしたら月子の意見に哉太も「ああ、だな」と同意した。

「…月子と哉太は俺を何だと…」

そう言うと二人して「…魔王なオカン?」「大魔王なオカン?」と答えるものだから、

「2人ともオカンからは外れてくれないんだな…」

俺はがっくりと肩を落とした。ウルトラの母みたいに言うなよ…。

「…ハルキちゃん、大丈夫かなあ」
「大丈夫だよ、きっと」

きっと、としか言えない。絶対といえば安心出来るのだろうけど、そこまで言い切れない。

「…うん、そうだよね!」
「ほら、もうすぐ休み時間終わるよ」

ぽんっと頭に手を乗せると月子は安心したように笑って自分の席へ戻っていった(まあそう見えるだけかもしれないが)。

「(…ホントに何があったんだろうなあ…)」

自分の席に座って考えていた時にガラリと扉が開き陽日先生が入ってきた。
「授業始めんぞー!」と叫びその思考は途切れた。



Side Kanata

やべえ…胸、いてえな…。
ホントは錫也達がすげえ心配するから授業とか抜けたくないんだけど
倒れた方がメンドクサイ事になるので仕方なく抜ける事にする。

がたっ、と席を立つ。錫也と月子がこっちを見た。

「直獅センセ、悪ぃけど保健室行きます」
「お、おお。大丈夫か…?東月に付き添ってもらうか?」
「や、大丈夫です。自分で、行けますから」

そう言い、教室から出た。
後ろを振り返ると月子と錫也が物凄く心配そうな顔でこっちを見ていた。
大丈夫だって。そういう意思をこめて笑ってみせた。

保健室の扉を開けるとまあ予想通りというか…星月先生は居なかった。
気にせずベットに横になっていると幾分マシになった。

「はあ…」

途中から授業に出れる気になれずそのままベッドに横になった。
一眠りしようかと体勢を変えようとしたときガラッと保健室の扉が開いた。

星月先生かと思い一応報告しようかと迷っている間に保健室に入ってきた人物はシャッ、と告知もなしにカーテンを開けた。

『え、あれ、…七海、くん?』
「は…冬原…?」

カーテンを開け俺を凝視して固まっているのは冬原だった。

「お前、何でここに…」
『あー…外居たんですけど寒くなっちゃって、秋でもやっぱり寒いんですね』

そう言いながら笑う頬は赤くなっていた。

『七海くんはどうしたんですか?』
「俺は、…」

どうする。病気だって言うべきなのだろうか?
言いあぐねていると「言いたくないのならいいですよ」と笑った。…別に言いたくないわけじゃないけどよ、でも言うタイミングを失った。

「…冬原、ベッド使うか?」
『あ、いえ大丈夫です。七海くんが使ってください。布団が余ってるなら一枚借りていいですか?』
「あ、ああ…」

布団を渡すと「ありがとう」と言ってソファに寝転がった。
そして保健室が静かになる。うわあ気まずい…。

口に出していいのか少し分からなかった。
けど気になって仕方がないので聞いてみる事にした。

「あ、のさ」
『はい?』
「今日の朝、どうして不知火先輩と喧嘩したんだ?」

そう言うとあー…、と少し困ったように笑い

『ちょっと、いろいろありまして』
「あ…悪ぃ言いたくない事なんだろ?言わなくていい」
『すいません』
「いいよ、別に…そうだ、お前って俺のこと嫌いなのか?」

あ、直球に聞きすぎたか?と思っても後の祭り。冬原を見ると見事に唖然としている。

『や、別にそういうワケじゃないですよ』
「そっ、か…じゃあ何で昨日逃げたんだ?」
『…ありがとう、とか言われるの慣れてないというか』

「その、えっとですねえ…」とか何とかへどもどした返事。頬をかきながら必死で言葉を考えているようだ。

おお、こんな冬原初めて見る。

『………まあとにかく嫌で逃げたわけではないです。…恥ずかしかっただけです』
「お前、まとめられなくなったんだろ」
『………七海くんオヤスミナサイ』

くるりと俺に背を向けて椅子に深く座りなおす冬原。なんて強引な逃げ方だ。

「お前ってそれが素?」
『…』

うわ、なんっつー見事な狸寝入り。

『…何笑ってるんですか』
「あ?笑ってねーよ」
『………その笑顔はなんですか』

少しだけ近づけた気がした
(お前面白いなー)(そうでもないですけど…)

2012.02.03 修正・加筆


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