Side Kazuki
「あ、っのヤロ…!」
車から降りてハルキと目が合った、瞬間逃げられた。何なんだあいつは、くそう…!
「一樹?どうかした」
「…また逃げられた」
そう言うと後ろから出てきた誉は一瞬目を丸くして「ああ、ハルキさんね」と笑った。
そして俺の荷物を持ちながら車から降りる。扉を閉めると車が発進した。
「追いかけないの?」
「追いかけても…どうせまた逃げられるからなあ」
そう言うと、誉はふうんと呟いた。
「捕まえてあげないと、彼女はずっと逃げっぱなしだと思うけど」
「…そんなの、分かってる」
「だったら追いかけてきなよ。一樹だったら最後には絶対捕まえるでしょう?」
どん、と若干強めに背中を押される。
「いって…!お前、ワザとだろ…!!」
「なにが?散々二人に振り回された身としてはちゃんとケリつけてもらわないと」
振り返ると、誉が不敵に笑っていた。
くそ、こいつたまにかっこいいこと言いやがって…!
「…行ってくる」
「荷物、一樹の部屋に投げとくからね」
せめて置いといてくれ、と笑ってから俺は走り出した。
「ハルキ!!」
いっくら叫んでもハルキは出てこない。
まあ出て来いといって出てくるわけもないけれども。
しかしおいでかい、でかいぞ星月学園。
ここで過ごしてきてこの巨大な敷地を恨んだのは二回目だ。ちなみに一回目は入学して一週間だ。
「っとに、あんにゃろう…往生際のワリィ奴…!」
今日という今日は逃がさない