lonely lonely | ナノ

連れ去って
あっという間に二週間は経ってしまい、一樹先輩は予定通りの日程で退院してきた。

先輩が帰ってくるのを今か今かと学園の校門で待ち構えている生徒がいっぱいだ。ちなみに今は放課後なので問題はない。
改めて一樹先輩の支持の高さを確認した。

私は、というと教室からそれを見ていた。

「…行かないのか」
『…会わす顔が、ないですよ』

宮地くんの問いかけに、私は笑って答えるしかない。笑うとは言っても"悲しい顔した"の部類に入るのだけれど。
私のせいで、怪我をさせてしまったのだから。そうしてまた扉の近くに立っている宮地くんから窓の外へ視線を向けると、

「…あのとき、」

宮地くんが唐突に口を開いた。私はまた宮地くんの方へ視線を戻す。

「お前が窓から落ちたとき、俺は近くに居たんだ」

そっか。あのときは教室移動のときだったから近くに居ても不思議ではない。
でも、と宮地くんは言葉を続ける。

「動けなかったんだ。俺は見てることしか出来なくって。…でも、不知火会長が躊躇なくお前の後を追っていったとき、ああこの人には勝てないと思った」

なんの、話だろうか。宮地くんは先輩と勝負でもしていたのだろうか。

「…俺は、自分の好きな奴が落ちても動けなかったのに…不知火会長は戸惑うことなくお前を抱き締めて下敷きになった」

好きなやつって、宮地くんはいったい誰の話しているんだろう。

「だからお前のために落ちたのに、無事だったお前が…そんな顔してちゃ不知火会長も救われないだろう?」

そう言って宮地くんは私の手を掴んだ。

「だから、ちゃんと伝えて来い」

宮地くんは私を引っ張って教室を出た。向かう先は、きっと決まってる。


『みや、宮地くんっ!待ってわたし…っ』
「待たない。…一番待てないのは不知火会長だろうがな」

そう言って、私を生徒の最前列に連れてきた宮地くん。
逃げようとしても宮地くんはがっしり私の手を掴んでまるで私なんて見えませんとでも言うように前を見据えている。

そうこうしている内に私が二週間前に乗った星月先生の車が見えた。
周りの生徒が沸くなか私は逃げたい気持ちと会いたくない気持ちでいっぱいいっぱいだ。
それでも宮地くんという枷があって私は逃げれない。

『!、』

どうしようどうしよう。
どうにもできなくて星月先生の車の扉が開くと、生徒が「会長おかえりー!!」だとか「不知火けが大丈夫かあ!」と声が聞こえる。

「ほら、行ってこい」

そう言われて背中を押され一、二歩前に出されると一樹先輩が、私を見つけた。

『っ…』

くるりと踵を返し、私は生徒の塊から抜け出した。
涙も連れ去ってくれないか
(この気持ちも)(何処かにやって)

title by 約30の嘘


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -