lonely lonely | ナノ

関わるな
朝、いつも通りの時間帯に食堂に行く。

星月学園の朝の食堂が開いている時間は長い。
だから皆早く来ようとはしない。何故なら寝たいからだ。だから私はそこを狙っていつも食べに来る。

今日もあまり人は多くはなかった。食券を出し、いつもどおりの食事を頂こうとしたとき、

「はいお待ちー…ってあれ、冬原さん?」
『…へ、』

どういう事だ。食堂にはおばちゃんしか居ないはずなのに、男の声が、した、んだけど。しかも聞き覚えのある声ときた。
顔をあげると、見覚えのある茶色頭。

『と、うづきくん…?』
「はい、おはよう」

そう言って頼んだ物をプレートに乗せ私に渡す。
私は唖然としながらそのプレートを受け取った。

『え、…何でここに居るんですか?』

んーおばちゃんのお手伝いです、と言いながら見事なフライパン捌きで何かを作っていた。

『あー…えっと頑張って、ください、ね』
「ははっ、ありがとう。あそうそう」

去ろうとした私を東月くんはわざわざ厨房から出てきて腕を捕まえた。

「昨日、どうして走って行っちゃったの?」
『え、あの、』

あれ、笑顔が怖いです、ね。え、幻覚…だったらいいなあ…。掴まれた腕はびくともしない。あ、これは恐いですね。

『え、や…あの…』
「どうして逃げたの?」

あれ、逃げた事になってる。や、逃げたっちゃ逃げましたけど。
ありがとうとか言われなれてない。言われる価値もない、なんてそんな事言っても理解してもらえるのだろうか。
どうしよう、どうしようと混乱していると、後ろから錫也!と呼ぶ声が聞こえた。

「錫也!何してるの!」
『月子、ちゃん…おはようございます』
「おはよう!ハルキちゃん!」

月子ちゃんが物凄い剣幕で駆けてきた。そしてその後ろには七海くん。七海くんは私を見て何ともいえないような表情をした。ちょっぴりの罪悪感と東月くんの一言が思い出された。

「錫也!手!」
「ああ、ごめんごめん」
「もう!ハルキちゃん大丈夫だった?」

月子ちゃんが東月君から庇うように私を自分の後ろにやる。
必然的に七海くんと近くなったわけで、

「…おす」
『おはよう、ございます。七海くん』

うわあ、気まずい。東月くんにチラッと視線をやるとははっ、と苦笑い。
何を言おうか悩んで七海くんの顔を見ると制服が翻っていた。

『七海くん、制服翻ってますよ』
「っあ、…悪ぃ」

思わず手を伸ばすと七海くんは気まずそうに顔を逸らす。
あー…手、出さない方が良かったのかな。

『それじゃあ私はここで、』
「あっ待って!今から食べるんでしょ?一緒に食べようよ!」
『いえいえ、お邪魔なので…それでは』

頭をぺこりと下げて食堂の一番隅に向かった。
あえて座った二人用席。月子ちゃん達は七海くんと東月くんの3人。必然的に座れない。

いただきます、と手を合わせお箸を手に取ったとき
ガタン、と動いた前の椅子。

え、誰。顔を上げると

「よう、前良いよな?」

不知火先輩だった。
警告警告。
関わるな関わるな、


2012.02.03 修正・加筆


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