lonely lonely | ナノ

代用品
一樹先輩にメールを入れる。生徒会広報を辞退させてください、とただ一言。

『…』

携帯をぱたん、と閉じてベッドの上に投げる。そして重い重いため息を一つついた。



Side Kazuki

「…くそ、なんでメール返事してこねーんだよ」

ぱかぱかぱかぱか。携帯を何度も開いては閉じて開いては閉じるを繰り返す。

ちゃんと理由説明しろ、と俺が送ったメールに反応はない。
電話は無視。会いに行こうとしてもこれでもかというぐらいに会えない。

これは、あれか。避けられてるってことか。
畜生、だからせめてなんか言えっての…。



「おいハルキ…、不知火会長の機嫌が日に日に悪くなっていくんだが」
『し、知らないです、よ』

宮地くんに指摘されたが私は知らないフリをする。
私は帰るところだったのでさっさと荷物をまとめて教室を出るところまで来ていた。

「いやだが…毎日星座科に訪ねてくるんだが」
『し、知らないっ』
「知らなくはないよねえ、ひーめちゃん」

振り返ると真っ赤で長い赤髪、白銀先輩が居て、にっこり笑って「ちょっと付き合ってくれる?」と言われた。
聞いたくせに私の手を引っ張って半強制的に連れて行かれた。


『…なんですか、私もう帰りたいんですけど…』

ぱっと手を離されたのは屋上庭園。もう朱が差し込んでいる。

「ねえ、どうして一樹を避けるの?」

一気にぐさりと核心に触れる。こういう聞き方、逃げられないから一番嫌だ。

「くひひっ…この間、告白されてたのが原因かな」
『プライバシーの侵害ですよ』

どっから見てたのこの人。そう言ってみたけれど白銀先輩は華麗にスルーを決める。

「俺はね、姫ちゃん。一樹に傷付いて欲しくない。あとね、姫ちゃんにもちゃんと気付いて欲しいんだ」

気付けってなにを気付けって言うの。一樹先輩がなにに傷付くって言うの。

「姫ちゃんはさ、囚われすぎだと思うんだよね。俺は」
『っ…やめて、』
「ほら、突っついただけでそんな揺らぐ程度でしょ?…姫ちゃんがさ、好きなのはだれ?」

やめて、そんな一気にたたきつけないで。考えることがいっぱいで、だから、まとまらなくて。

「姫ちゃんはさ、一体どっちの"かずき"が好きなの」
『っ、わたしは…っ一樹先輩好きじゃないですから…っ!!』

私は二人を重ねてなんてない、よね…?

「知ってるよ、んなこた」

後ろから、不意に声がした。なんで、ここに、居るんですか。
ゆっくり振り返ると、逆光だったけれど声とシルエットで一樹先輩だと分かった。

「だからそんな顔すんな、…帰って良いぞ」
『っ、…帰ります!』

私はいまどんな顔をしていたのだろうか。それでもそんなこと聞けずに駆け出した。



Side Kazuki

「…桜士郎」

余計なことすんな、と言うと桜士郎はいつもより素直にごめんと謝った。

「でも、」
「でもじゃねえ。あいつ今凄い不安定なんだと思う。だからそっとしてやってくれ」

あの言葉に俺が勝手に傷付いたとしても、だ。
別に、悲しくなんてねえよ。たとえ重ねられていたとしても。代用品でも構わない
(だから、そんな泣きそうな顔すんな)(ばか)


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