「…!ハルキ!」
『はっ!』
宮地くんに顔を覗き込まれてやっと意識が覚醒する。
「授業終わったぞ」
『………ノート、とってない…!』
やってしまった。もう黒板には白い文字は残っていない。
かるく絶望していると宮地くんがノートを貸してくれた。
「どうかしたか?最近ぼーっとしていることが多いぞ」
『や、…まあ…色々、あって…』
告白されてからもう三日も経っている。
それでもやっぱり答えは出なくって。
出ないというか正しくは自分がちゃんと自分の気持ちを判断できないのだ。
「そうか…」
『…はいまあ、』
宮地くんは頑張れ、と言いながらノートを持ってきてくれた。
『すいません、やっぱり付き合えないです』
「…そう、ですか」
今度はこちらから呼び出した。
そして挨拶もそこそこに頭を下げた。
『…ごめんなさい』
「いえ!あの、気にしないでください!それが冬原さんの答えなら俺は満足ですから」
彼は苦笑い気味に手をふる。
「今まで特に接点なんてなかったんです。でも冬原さんが少しの間でも俺のこと考えてくれただけでも嬉しいから」
だから結果はもう良いんです。残念だけど、と頭を掻きながらそう言う彼に振ってからなんだけどいい人だなあと思う。
『…あのっ、………告白嬉しかったです。私、学園の人に嫌われてると思ってたので…』
「…それ、勘違いですよ。皆話しかける勇気がないだけですよ」
お世辞でも嬉しいです、そう返すとお世辞じゃないのにと彼は笑った。
「…冬原さん、知ってました?
冬原さんの笑顔、すっげえ可愛いんです」
『…そんなことは、』
「でもその顔を見せるときって、」
嘘、うそうそ、うそ。きっと彼の見間違いだよ。私は彼に言われた言葉が信じられない。
正しくは信じられない、じゃなくて信じたくない。
だって、だって…っ、
『一樹先輩なんて、嘘だ…!』
頑なに否定していることは、ただそれを認めたくないことに過ぎなかった。
その笑顔は誰のものだったのか
("不知火会長の隣に居るときだけなんですよね。")