「おっきたきたー!」
『すいません、HR長引いちゃって…』
いいよいいよ〜、と既に来ていた屋上庭園のベンチで白銀先輩は携帯をいじっていた。
こっちおいでーと自分の隣をぽんぽんっと手のひらで叩いて招くので私はおずおずとそこに座った。
「くひひっじゃあ早速はじめちゃうね」
うわ、もう!?
思わず体がこわばった。
「とりあえず質問その1ー!好きなものは?」
『へ…』
「え?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまうと白銀先輩も同じような声をあげた。
「どうかした?」
『いや、あの…えっと、…そんなんで良いのかなって』
「いやいや、ハルキちゃんの場合はそんなのが知りたい男子も多いんだよー?知らなかった?」
そんなの知ってどうするんだろう…。
顔に出ていたのか白銀先輩がくひひっと笑う。
「"そんなの"も知られてなかったのがハルキちゃんの現状だよ?」
『あ…』
「だからそんな小さな情報でも知りたい男子がいーっぱい居るんだよ」
ていうわけだから好きなものは?と口端を吊り上げて私に問いかける。
『好きなものは…、甘いものです』
「へえ、意外と女の子らしいとこもあるんだねえ」
意外は余計です、と言うとごめんねーと悪びれてもない様子で謝ってくる。
「じゃあ嫌いなものは辛いものとか?」
『いえ…蛇とか百足とか…なんかこう…にょろっとしたもの…』
「じゃあクモとかは平気なんだ?」
ああはい、というと変わってるねえと言われた。
変わっているのは白銀先輩だと思ったけれど口には出さなかった。
「ハルキちゃん!」
『月子ちゃん…、ってそれ…』
朝学園に行く途中で声をかけられた。
見たよ!なんて言う月子ちゃんが手に持っていたのは昨日発行されたという新聞部の記事。…私のインタビューは載っているものだ。
月子ちゃんの後ろに居る錫也くんはにっこり、七海くんはにやにやしているので二人とも見たんだと思う。
…土萌くんはよく分からない。なんかそっぽ向いているし。うわあ、居づらい。
『えっと…それじゃあ私もう行きますね』
「あ、ハルキちょっと待って」
踵を返して再び学園のほうへ歩き出そうとすると錫也くんに呼び止められた。
振り返ると月子ちゃんと七海くんんが土萌くんを私の方へ押し出していた。
え、なにこれ。何が始まるの。ぽかーんとしている私を余所に土萌くん私の前に来た。
「…僕、この赤い髪と目のせいでいじめられたことがあるんだ。だからつい過敏になっちゃって、」
『…はあ』
え、結局なんだろうこれ。恐らく間抜け面で理解できてないことが全面的に顔に出ていたのだろう。
土萌くんがああもうっと痺れを切らして唸った。
「この間はごめんって言ってるんだよ!なんで分からないの!?」
『ええっ!?あ、そうだったんですか!?』
よく見れば後ろの三人はにやにや顔だ。
『あの…気にしないで下さい。ジロジロ見ていた私もいけないんだから』
「僕が、悪いっていってるんだから認めてよ!」
『う、あ…はい』
なぜかキレられた仲直り