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伝えたい
『お、おはよう…ございます』

笑えていたのでしょうか。
春休み中に学校に行く用があり久しぶりに会った月子ちゃん、七海くん、錫也くんに挨拶をした。
しかも笑顔でという課題つき。ちなみに課題を出した人、私。

不安になって前の3人を見ると、"唖然"という言葉がぴったりな表情だった。
ああやってしまった、かもしれない。暫くして、月子ちゃんが震える口を開いた。

「わ、笑っ…た」
『へ、』
「かっ、可愛いよハルキちゃん可愛い―――ッ!!」

そう叫びながら勢いよくこちらに飛びついてきた月子ちゃん。
支えきれなくてよろけて転ぶ。

『った…』
「おい大丈夫か!?馬鹿月子!勢いつけすぎだ!」
「ごっごごごめんね!でもあのつい可愛すぎだったから…!」
『だ、大丈夫ですよ…』

それにしても月子ちゃん軽いなあ…。私の足の上にて眉を下げて謝る月子ちゃんはとても軽い。

「こーら月子。早く退かないとハルキが可哀想だろ?」
「はっ!ごめんね…!」
『いえいえ、大丈夫ですよ』

私の上から飛び退いた月子ちゃん。私は錫也くんから差しのべられた手を有難く使わせて頂き立ち上がる。

「しかし…冬原が笑うとはなあ…」
『え、あ、…変、でしたかね…』
「へ、へへへ変じゃねーよ!!」
『良かったあ…』

変じゃないのか、そうか良かった。安心のため息をつくと3人に凝視されていた。

「………哉太、カメラ」
「任せろ」
「俺にもくれよ」
『えっ、え、…え?』

なぜか七海くんのカメラのレンズがこちらに向いている。
へ、なんで、ですかね?

「あ、ちょ…冬原笑えよ!」
『へ…、え?』
「そうだよハルキちゃん笑って!」

笑ってと言われてもそんなにいきなりは笑えない。
というか、なぜ、このようなことを言われているのかさえ、理解出来ていないのだから当然である。

『わ、笑えませんって…!というかそのカメラは何ですか!』
「何って…なあ?」
「だって…可愛いから心にも残してるけど記録にも残しておきたいんだもん!」

だもん、って可愛いけど…!可愛いけど、

『謹んでお断りさせて頂きます…!』
「えっなんで!?」
『写真とか苦手なんですよ…!』

写真映り良くないですからと断るとむぅ、と頬を膨らませている月子ちゃん。
ああ揺らぎそうになってる心ストップ!頑張って!

『あの…、』
「大丈夫…ハルキちゃんの嫌がることはしないよ…」

そう言いつつも兎のしょぼくれ耳が見えるのは気のせいだろうか。

『…い、いい一枚だけ、ですよ…』
「え…っホント!?」

負けた。いや、負けるしかない。だって月子ちゃん狡いよ。

『あの、でも…変な顔しか出来ないですから、ね…』

一応忠告してみると錫也くんがとても良い笑顔で

「大丈夫、ハルキの顔は変じゃないから安心して?それにカメラマンの腕もそれなりに良いからさ」
「それなり、っておいこら錫也!!」

そう言いながら七海くんがカメラのレンズを向ける。
ああああ…!!ほんと不細工な顔しか出来ないですから…!!

「っておい、顔堅ぇぞ!」
「ハルキちゃん笑ってー」
「そうだぞー、……うーん哉太変な顔でもして笑わせてみればどうだ?」
「いや何で俺なんだよ!?自分でやれよ!!」
「いやいや俺はどんな顔でも決まっちゃうからさ、哉太の方が面白いぞ?」
「言外に自分の顔が整ってるって言ってるんだよなそれ!?」

なんだか七五三のときに写真館で写真を撮られたときの状況と似てるなあ。
ていうか錫也くんと七海くんのやりとりが完璧に漫才。

「っ、あ!哉太シャッター!!」
「お、おう!!」

パシャッとシャッター音が聞こえた。
シャッター、ということは笑っていたということだろうか。

『笑って、ました?』
「うん!!バッチリ!!」

気づかぬ内に笑っていた、ということだ。
七海くんがカメラを持ったままこちらに駆けてくる。

「どうだ?」
『う、わ…』

確かに笑っている自分が紛れもなく七海くんが差し出したカメラの画面に映っている。

「っしゃ、これを俺とー錫也と、月子だから3枚プリントアウトすれば良いのか?」
『あ、っ…1枚私にください…』
「別に良いけど…」
「どうするの?」

首を傾げた月子ちゃんに「渡したい人が居るんです」と伝えた。
私はいま笑えてますよ、と伝えたい
(えっ誰それ!)(…秘密です)(か、彼氏とか!?)(…違いますよ)

2012.02.04 修正・加筆


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