lonely lonely | ナノ

ロックを解除した携帯にはトップに分かりやすくハルキへと名前がついたメモがあった。

開くと"オルゴールのなか"と一文。
オルゴール、って…きっとあれのこと、だ。

『和樹の部屋に行きたいんですけど…、良いですか?』
「勿論よ、行きましょう」
「あ…俺は、樹さんが良かったらそのまま部屋に残っておきます」

不知火先輩はそう言う。樹さんは構わないわよ、と返事した。
樹さん、私、は二階の和樹の部屋に向かった。


戸棚にそれはあった。
初めて私から和樹に贈ったものがオルゴールだった。

オルゴールを開くと中にあったのは鍵と封筒、それと小さなメモ。

何の鍵なんだろうか。分からないけどとりあえず封筒を開いた。
中には2つに折られた便箋が2枚。微かに震える手でそれを開いた。


"ハルキへ

この手紙を見てるってことは
俺はお前の隣には居ないってことだよな。

いつまで生きれるか分からなかった。
だからこの手紙書きました。

お前が読まないにこしたことはないけど
俺が居なくなったらなにも伝える術がなくなるから書いた。

手紙とか書いたことないから
変な文章とか字が汚かったらごめんな。
うまく伝わってたら良いと思います。"


それが手紙の始まりだった。
なんで、和樹には居なくなることが。
まさか星詠み?そんなの聞いたことない。


"あの日、ハルキと初めて会った日。
ハルキに会えたこと奇跡だって思えたんだ。

病気の俺がさ、恋とかしたってどうせ死ぬんだから
そんなのしなくて良いと思ってた。

だけど、ハルキが本気で好きだった。
いや好きじゃなくて大好きとかもう言葉で表せないぐらいの気持ちだった。

最初で最後の恋ってこういうのを言うんだろうなって思えた。

でも最期は結局死んじゃうんだ。
せめて、ハルキと一緒に居られなくなるときまでかっこつけたい。
多分かっこつけてると思うけどさ。

もし俺の願いをハルキが叶えてくれるなら2つだけお願い。

笑ってください。

俺が最初好きになったのはハルキの笑う顔だったから、
笑ってくれないと困ります。

それと、ハルキを俺以上に想ってくれる人と幸せになってください。

出来ればそいつが俺より良い奴で優しい奴で面白い奴で俺が文句つけれないような奴が良いです。
それで、俺が好きになれそうな奴が良いです。


ハルキと一緒に居れて幸せだった。
俺は世界一の幸福(しあわせ)者だーって世界の中心で叫べるぐらいすっげえ幸せだった。

ありがとう、大好きだ。


和樹"

ぽたり、水滴が紙に落ちて和樹の名前が滲んだ。
目元をおさえてそれ以上紙の上に涙が落ちないように防ぐ。

「…和樹、心臓病だったの聞いてなかったんでしょう?」

樹さんがぽつりと呟く。私は首を縦に振った。

「あの子、頑固だったから。ハルキちゃんには言わないって言い張ってたの」

なんでそんな大事なこと言ってくれないの。馬鹿。

「最後までかっこつけたかったのよ、…馬鹿だから」
『っ、バカ…!』

バカ、バカバカバカ。ほんと大バカ。
この場に居たらきっとそう罵っていた。

でも、

『かっこよかった、です…っ最後まで…!、』
「ハルキちゃんどうして私なんか守ったの、って言ってたでしょう。きっとね和樹は"守りたかったから守った"って笑って言うわ」

だって私と私の大事な人との子供だもの、と笑う樹さん。

『っ…』
「ハルキちゃん、お葬式の日に謝ったでしょう。でも、私からしたら本当にありがとうだったわ。

だって、和樹を好きになってくれてとても嬉しかったんだもの。
意識を失すまで和樹は自分よりハルキちゃんのことばかり心配してたわ」

ねえバカでしょう。自分の心配してよ、ねえ。

『バカ…、っ!だ、いすき…!!』


夢じゃない場所で会いたい
(彼への気持ちを叫んだら、)(いつか会えるのでしょうか)

2012.02.04 修正・加筆
title by約30の嘘


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