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浸食
俗に言う新入生の歓迎会で、私は貧血でダウンしていた。


ふらふらする足で保健室に向かうと、ベッドに誰かが座って保険医の治療を受けていた。

「あら、貴方どうしたの?…ってその真っ青な顔は貧血?」

さすが保険医。
こくりと頷くとベッドで横になるように指示された。

当然のように向かい側には治療中の男子生徒。じーっ、と顔を見つめられて何だか居心地が悪い。

「はい、終わり」
「先生ありがとう!」
「ありかとう、じゃなくてありがとうございます、でしょうが」

ぽかりと頭を小突かれて足に包帯を巻かれた生徒は
悪戯っぽく笑いながらございますと付け足した。

「じゃあちょっと私は職員室に行くから。
日向くんは絶対安静よ!」

彼はヒナタと言うらしい。
うわ、初対面男子と二人きりとかやめて行かないで先生。

そんな私の心のなかを知るよしもないヒナタくんは私に話しかけてきた。

「なあなあ、お前何組だ?」
『………2組』
「なーんだ、隣か…。
まあ良いや!ここで会ったのも何かの縁!俺は3組の日向和樹だ!よろしくな!」

差し出された手を遠慮がちに握る。日向は苗字だったらしい。

『…よろしく、ね』
「いやよろしくは良いんだけど…、名前は?」
『…冬原』

そう言うと微妙な顔をしていた。あんたが言えって言ったから言ったじゃない。

「そうじゃなくて名字じゃなくてなーまーえ!」

ばんばん布団を叩きながら軽く膨れっ面で言われた。

『…ハルキ』
「ハルキな!っと、俺はもうそろそろ行くわ」
『え、でもその足じゃ…なにもできないんじゃ』

彼の右足にはぐるぐる包帯が巻かれている。
その状態で行って一体どうするんだろうか。(しかも絶対安静っていわれてたよね…)

「バッカ!なに言ってんだよ。
その場に存在すること自体だって立派に参加してることだろ!」

祭りは俺抜きでは始まらせないぜ…、となぜかかっこつけながらそう言う。
いやもう始まってるし。

『ていうか歓迎会を祭りって…ふふっ、』

分かった。日向くんは馬鹿だ。この人は典型的なアホの子だ。

「………」

笑いが収まってきて、日向くんが私をじーっと見ていることに気付いた。

『え…。な、なに?』
「いや…笑ってる顔の方が可愛いなあって」
『っ、!』

アホの子の次はタラシときた。

『ば、っそういうのをお世辞って言うんだよ、』
「俺、お世辞とか言わないし。俺ショージキだから!」
『はいはい、お世辞でも嬉しいよ。ていうか、祭りは俺抜きでは始まらせないんじゃなかったの?』
「んー…今はハルキと喋ってる方が楽しいから良い」
『…そりゃどーも…』



ほらもう、じんわりと。



君に浸食されてたの。
(日向くんは、タラシだね)(?タラシってなんだ?)((天然か…))

2012.02.04 修正・加筆


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