『不知火、先輩』
「お、お前も試験勉強か?」
お菓子を作って、皆を食堂に呼ぶと何故か不知火先輩が居た。え、いまちょう会いたくない。
(危うくシュークリームの乗ったトレイを落としかけた)
あと月子ちゃんとピンク頭の優しそうな人。多分青空って人。
「なに作ったんだ?」
『あの、シュークリーム…』
さっきのさっきなのでぶっちゃけ一方的に気まずい。言葉がうまく出てこない。
錫也くんが耳に顔を寄せる。
「…どうしたの?大丈夫?」
『や、あの、何でも…』
ないです。の声は消えかけた。
こんな状態で何でもないなんて嘘だって分かる。そうでなくても錫也くんは聡い。
「そう?でも何かあったら頼っていいから」
『ありがと、ございます…』
にこりと笑って錫也くんは私から離れた。
「冬原ー、東月、宮地ー早く食わせてくれぇー」
せびる白鳥くんに宮地くんがうるさいだれるなっと一喝。
机にシュークリームの乗ったトレイを置くと群がられた。
「あの、」
『はい?』
振り返ると月子ちゃんとピンク頭くん。
「冬原ハルキさん、ですよね?」
『あ、えっと…青空颯斗くんですよね』
そういうと正解だったようではいそうです、と微笑んだ。
「どうぞ仲良くしてくださいね」
『こちらこそ』
「会長がいつも貴女の話ばかりしていたんですよ、」
ちょ、あの人青空くんに私のナニを喋った。
「お、さっそく仲良くなったかお前ら!」
肩にさりげなく回された不知火先輩の腕。やだもう。訳分からない。何何何。
『み、宮地くん!』
「む、っ!?」
混乱した頭は何故か近くに居た宮地くんの名前を呼ぶように指示を出し宮地くんの腕を掴むように指示を出した。
『っ、あの…っちょっと、いいですかっ』
「お、おい…っ!?」
ぐいぐい引っ張って食堂から離れた。
とりあえず何でも良いから不知火先輩から離れたかった。
「…おい、どうかしたのか」
『…宮地くん、』
宮地くんにどこに行きたいんだ、と聞かれ人の居ないところとリクエストしたら連れてこられたのは弓道場だった。
宮地くんが深刻そうに顔を覗く。
もうこの際、宮地くんに聞いたほうが早いんではないか。
『宮地くんは、…何で私が誰かと会うことを知ってたんですか?』
そう言うと、宮地くんは目を丸くしたあと私から目を反らした。
その行動はきっと肯定を示しているでしょう。
『…どうして?』
「………すまん」
宮地くんはさも土下座せん勢いで頭を下げた。
『謝らなくていいんです。…ただ、どこから聞いたのかなって』
「………この前の星見会のとき、お前を探していて生徒会室の前に居て聞こえたんだ。
悪い。聞くべきではないと思ったんだが…」
罰が悪そうに顔を反らす。
ああなんだ、不知火先輩が言ったんじゃなかったんだ。
『いえ、良いんです。責めるつもりなんてないので』
それじゃあ、と踵を返して戻ろうとしたら、
腕を掴まれ引っ張られ後ろに倒れそうになる。
「…お前は、そういう大事なことは不知火会長にしか言わないのか?」
すぐ上で、宮地くんの声が聞こえた。え、なんで?
「お前は…、なんで俺を頼ってくれない?」
そんなきみは知らない
(み、やじくん?)(なんで、抱き締めてるの…?)
2012.02.04 修正・加筆