椅子を持ち出して3人で机を挟んで座る。
…二人には悪いけど、詳しいことは話せない、ですよね…。
『…』
どうやって話そうか考えていると
「言いたくないことは言わなくて良いよ」
東月くんは細やかだ。そう言ってくれると幾らか楽だ。
『その、…例え話になるんですが
目の前に怖いものがあるとして、それを回避することはできなくて…、逃げて遭遇するのを先延ばします?そのまま進みます?』
言った後にちゃんと言いたいことが伝わったか気になった。
二人を伺うと、考え込んでいるようで目線を床に向けていた。
「…俺は、」
最初に口を開いたのは宮地くんだった。
「きっと逃げない」
「うん、俺も一緒」
私にその強さを分けてほしい。
「だいたいだな、会わないって道はないんだろ?それが何時になろうが結局は会うことになるんだ。悩むことないだろう」
言われてみれば、
『………そ、ですね』
「うんそうだよ。だから逃げるべきではないと思うよ」
そうですよねえ…、と呟く。二人ともうんうん頷いてる。
『ありがとうございます、幾らか楽になった気分です』
「少しは役にたてた?」
『あ、はい。むしろ少しじゃないですよ、とても助かりました…。
お礼、なにがいいですか?』
そう聞くと二人とも唖然とした。え、なんで。
「お礼なんて…、貰うようなことじゃないだろ」
「そうだよ」
でも…、というと東月くんがよしじゃあ、と手を叩いた。
「じゃあ俺のこと名前で呼んでよ。で、俺も冬原さんのこと名前で呼ぶから」
『………錫也、くん』
名前で呼ぶと東…錫也くんは満足気に笑った。
「よろしくね、ハルキ」
『なんか、…名前呼び慣れない…』
呟けば聞こえていたのか…錫也くんがまあ慣れていって、と笑った。
「ほら宮地くんも」
「む、なんだ」
『名前で呼んでも良いんですか?』
宮地くんにそう聞けば複雑そうな顔をしていた。う、そういう顔は…。
『イヤ、ですか?』
「嫌、というわけではないが…名前呼びは慣れてない」
『じゃあ、私のこと名前で呼んでください』
分かった、と宮地くんが返事をしたと同時にオーブンがチンッと音をたてた。
クリームをシュークリームに挟みながらふと思った。
あれ、私…宮地くんに、会うことに話したっけ?
縮まる距離と広がる疑問
(え、あれ…?私、不知火先輩にしか、)(どうして、知ってるの…?)
2012.02.03 修正・加筆