少しだけ考えさせて、とお母さんにメールを送った。
その数分後にお母さんからも分かったわというメールが返ってきた。
…今更、何話されるんだろう。
実は、不知火先輩に言ってないことがひとつある。
和樹の葬式の日。
責めたくて仕方がない筈であろう私に和樹のお母さんとお父さんは泣きながらありがとう、と言った。
訳が分からなかった。
おじさんとおばさんは和樹に死んで欲しかったの?
そんなわけない。だって、和樹の家はいつも明るそうで、ああ上辺だけってこと?
いろんな言葉が頭の中を飛び交う。
やっぱりその感謝の言葉の意味は分からなかった。
そしてそのまま私は直ぐに星月学園へ入学したからその言葉の意味を改めて聞くことは叶わなかった。
『はあ…』
「む、ため息なんてどうした」
『あ、いや…なんでもないですよ』
そう言ってごまかして開いていたノートに目を向けた。
「錫也ー、腹減った」
「哉太はそればっかだな…、さっきもあげだろ?」
少しは集中してやりなさい、と東月くんは七海くんにお説教。わあ、お母さんここに居る。
三週間後に迫った進級テスト。
そのテストに向けて図書館にて、勉強中である。
メンバーは。
星座科から私に宮地くんに白鳥くん。
それと天文科から東月くんに七海くん。神話科から犬飼くんだ。
月子ちゃんと神話科の青空くんって人は生徒会で遅れるらしい。
しかし前はこんなにたくさんの人と試験勉強するなんて、思ってなかった。
今では普通にここに居るんだから吃驚だ。
少し前の私がこの光景を見たらきっと卒倒する。
「おい、さっきからずっとぼーっとしてるぞ」
宮地くんに顔を覗き込まれていた。具合が悪いのかと聞かれたので首を横にふった。
「なあ東月。甘いモンが食いたい」
東月くんと七海くんが言い合っているなかに、犬飼くんが便乗した。
「犬飼くんまで…」
「いや、俺じゃなくて」
冬原が、と犬飼くんは私をさして言った。
そんなことを、言った覚えは、ない。
呆気にとられて、否定することを忘れていた。
「なんだ、冬原もかよ」
『いや、違…っ』
「そうだ、こいつも言っていたぞ」
宮地くんまで便乗する始末だ。
意味が分からずにいると、宮地くんがこっそり耳打ちしてくれた。
「犬飼なりの気遣いだ。察してやれ」
『え…』
ようは、休憩してこい、ってことかな。
犬飼くんをちらっと見ると白鳥くんと肩を組んで東月くんに「お菓子!お菓子!」と言っていた。
…いやあれは、自分が食べたいからじゃ。
しかしながら、宮地くんの方が付き合いが長い。
東月くんは、はあとため息をついて席をたった。
「俺が作っている間、ちゃんと勉強すること。いいな!」
なんだかんだで東月くんは甘い。
『あ、じゃあ私手伝います』
「冬原さんが食べたいんだから、いいよ」
『私が、手伝いたいんです』
そう強く宣言してみると、東月くんは一瞬目を丸くしたあと笑ってじゃあお願いしようかな、と言った。
私は筆記用具などを軽く片付けて席を立った。
いまでもきっと泣いている
(そんなわたしじゃ)(いられない)
2012.02.03 修正・加筆
title by約30の嘘