ぎぎぎっと首がゆっくりぎこちなく回る。
だって後ろには、黒い笑顔の東月くんが居た。
東月くんの後ろには「あーあ」というような顔をした七海くん。あ、終わった。私終わった。そう確信した。
『あ、え…』
「冬原さん、俺暖かい格好で来るように言った、よね?」
『はい…』
笑顔が怖い。後ろから黒いオーラが見えるのは間違いなく気のせいなんかじゃない。
「それは薄着っていうんじゃないのかな?」
『はい、…仰るとおりです…』
「錫也!」
東月くんの後ろから声がした。
影になっていて見えなかったけれど声で分かった。月子ちゃんだ。
「錫也!違うの!私が悪いの!」
『い、言わなくていいですよ!』
私の制止を無視して月子ちゃんは東月くんにさっきの出来事を説明する。
「なんだそーいう事か…ていうか、どうして自分達で解決しようとするの、お前らは」
まったく…、と言いながら東月くんは自分の上着を脱ぎ始めた。私は慌ててそれを止める。
『大丈夫ですよ!』
「だめ。着なさい」
『…おかーさん』
「お母さんで結構。ほら着て」
どうやって断ろうかと悩んでいるとポケットで携帯が鳴った。
ラッキー、と思い受信フォルダを確認する。
一番上の名前を見て体が固まった。
「冬原さん?」
『あ、の…電話、きたんで』
失礼します!と叫んでその場から逃走した。
後ろで名前を呼ぶ声がしたようなしてないような。
Side Kazuki
桜士郎と喋りながら星を見ていると、一人で居る冬原を見つけた。
「あ、俺ちょっと行ってくるな!」
「は?あ、…くひひっ行ってらー」
一瞬驚いたように声をあげたが俺の走り出した方向を見て納得したようだ。
茶化すような笑顔で俺に手を振った。
…くっそ、なんか腹立つな。
「冬原、!」
『あ…不知火、先輩』
どもです、と言う冬原の頬は赤くなっていた。
「お前、月子たちと星見るんじゃないのか?月子が言ってたぞ。だいたいその格好…風邪ひくぞ馬鹿」
『あ…、大丈夫です、んで』
そう言いながら苦笑いした顔はなぜか固い。
なんかあったか。そう聞くと
『何でもないですよ。………不知火先輩は…なんで私にそこまで気にしてくれるんですか?』
「どうしてって…俺は生徒会長だし、力になりたいと思うのは当然だろ?」
そういうもんですかねえ、と若干納得のいってないようだった。
「そういうもんだよ、生徒会長ってのは生徒のことをよく考えてるもんだ」
『そうですか…あ、流れ星』
偶然上を仰いでいると冬原は流れ星を見つけたらしい。
俺から空に目が移った。
それをいい事に俺は一瞬だけ顔を歪めた。
嘘だよ。
確かにそう思ってはいる。だけどそんなもん後付けだ。
一番の理由は今はいわない。
お前が好きだからだ、
(なんて云ったらお前はどんな反応をする、?)(怖いから云わない)(、云えない)
2012.02.03 修正・加筆