lonely lonely | ナノ

なんのための
Side Kazuki


「要らないなんていうなよ…」
『…って、っわたしには和輝が全部だったのに…っ』
「…そうか、」

そう言うと冬原はゆっくり頷いた。

「…全てじゃない、と思う事はできないのか?」
『っ…できない、』
「じゃあお前を今日から作っていけばいいじゃないか」

お前の全てがないというのなら、
お前は今ゼロだ。だったら今日からお前を作っていけばいい。

冬原は目を丸くして顔をあげた。
俺の提案した案は難しいのだろうか。そんな事ない。やろうとすれば、できるはずだ。

「それじゃあ、ダメか?」
『…』
「なあ、頑張ろうぜ。失くすものがなくなったからって自分の身を投げ捨てるんじゃなくて、あるものを拾っていけよ、な?」

そう言うとぼろぼろと涙を零した。

『今からでも、…遅くないですか…っ』
「遅くない」
『…で、きますかねぇ…っ』

出来るさ、そう言って抱きしめた。冬原は抵抗しなかった。

「出来るさ、お前なら」
『っ、』
「大丈夫、俺が、学園の皆がきっとお前の支えになってくれるから」
『…不知火、先輩…、今だけ、今日だけ…泣かせてください…、っ』
「ああ、」

ぽんぽん、と背中を軽く叩いてやると冬原は俺のシャツを両手で力強く握って、
押し殺していた声が完全に泣き声に変わった。
わああ、と小さい子が泣くように。

その涙は、どれだけ溜め込んだ涙だったんだろう。誰も拭ってくれないから、と溜め込んでいた涙。

思いっきり泣けばいい。そんで明日から歩けばいい。

なんのための足だ
(歩むためのものだろう)


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