lonely lonely | ナノ

居ない
右手だけが温かいから目が覚めた。右手を確認すると誰かに繋がれていた。
手をたどっていくと、銀色の髪で。

『し、らぬい…先輩?』
「すー…」

眠っているようだ。
そしてなぜかシャツ一枚。上に着ているはずのジャケットは私のうえにかけられていた。

左手で不知火先輩の頬をあたると驚くぐらい冷えていた。時計を確認するとなんともう夜中の2時だ。

いつから、居たんだろう…。ていうかこれは、起こさなきゃいけないよね…?

不知火先輩を揺らす。

「ん、あ…冬原?」
『…あ、』

なに言えばいいんだろうか。
おはようございます?いや、なんか違うな。

『あの、ジャケット…ありがとうございます』
「おう、寒くなかったか?」
『おかげさまで』

ジャケットを不知火先輩に返して立とうとすると
不知火先輩に手を掴まれた。

一瞬にして不知火先輩の腕のなかに包まれた。

『っ、』
「お前、何で泣いてたんだ」
『泣いてなんか』

目元赤いぞ、否定しようとした言葉を否定された。

『っ、離してください!』

突っぱねようと不知火先輩の胸をぐいぐい押してもびくともしない。

「聞けないな。お前は俺と話そうとする時いつも逃げるから」
『っ…分かってるなら放っておいてください』

放っておいてよ、お願いだから。

「その理由が分かんないからお前に教えて貰おうとしてるんだろ?」
『先輩に話すような事はないです!』

やめてよ、入ってこないで。

「日向和樹」
『っ』

心臓が止まった。いや、実際には止まってはいないが感覚的にそんな感じになっただけ。

何で先輩の口からその名前が出てくるの。先輩は、なんで、知ってるの。

不知火先輩の腕の中から逃れられた。そして不知火先輩を見つめる。

『なんで、知って…っ!』

その名前はここでは語られるはずのない名前だ。

『なんで、っそんな事…!』
「お前が、知らないくせになんて言うからだろ」

だから俺は調べただけだ、と言う。

『どうして、そんなことするの…っ』
「言ってるだろ。お前が何も言わないからだ。…日向って奴はお前の恋人だったんだな」
『やめて…っ』

もういっその事、耳を塞いでしまいたい。
でも手は凍ったように動かない。寒さで凍ったのだろうか。

『やめて…!』
「それで、この星月学園に入学する前に、亡くなった」
『っ、やめて!』

いまだに、和樹が死んだなんて事は聞きたくない。
恐ろしいぐらいに臆病な自分がまだ居る。

君がどこにも居ないなんて、
(信じたくない)(そんな現実は、いらない)

2012.02.03 修正・加筆


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