Side Kazuki
「!」
視えた。何がって、あいつが一人で笑いながら泣いてるのが。
そして口が動いている。残念ながら何を言っているのが分からなかった。
でも場所は分かった、屋上庭園だ。
生徒会室に戻り、さっきの言葉を悶々と考えているときにこの映像。
考える事は言葉から映像に即座に移り変わる。
ガタッと思いっきり立ってしまったので太ももをぶつけてしまい自分の座っていたところへ逆戻り。いってえ…!
颯斗と月子が怪訝な顔で俺を見ていた。
「一樹会長、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ…ちょっと、俺は今日帰るな!お前らもひと段落ついたら帰れよ!!」
きっと月子は颯斗が送るだろう。今、問題はあいつだ。
今日の仕事は終わらせた。颯斗も文句はないだろう。俺は急いで屋上庭園に向かった。
「!、…」
あいつは壁に寄りかかって寝ていた。目元を赤くして。
あいつは一人で何を考えて、泣いていたのだろうか。そして俺がそれを聞いた所でこいつは答えてはくれないんだろうな。
なんで一人で泣くんだよなんて俺のエゴだ。
真冬にこいつは星月学園の正装というまあなんとも寒そうな格好でここで寝ていた。
誰も来なかったらこいつはどうするつもりだったんだろうか。
俺は自分の上着を脱いで冬原にかけた。そして隣に座る。
冬原の手を掴むととんでもなく冷えていた。おいおい、…こいつ何時から居たんだ?
『っ…、』
「、」
やべえ、起きたかも。
冬原が起きたら俺はどうすればいいんだよ…。明らかに俺避けられてるしなー…。
悩んでいると、
『ぃ、…なで…っ』
「、!」
『か、ずき…っ』
最初の一言はあまり聞こえなかった。しかし、二言目は俺を揺さぶるのには充分だった。
きっと、俺の手をそいつと間違えた。だから冬原は俺の手を握った。
また馬鹿なこと考えてる
(悲しいだなんて)(思っちゃいない)
2012.02.03 修正・加筆
title by約30の嘘