lonely lonely | ナノ

ちがうところ
Side Naoshi

冬原の去った方向を眺めながら頭をがりがりと掻く。
どうしたもんかなあ…。

「直獅、どうしたんだ?」
「琥太郎センセ…」

どうやら琥太郎センセは保健室に居たらしい。顔だけ廊下に覗かせていた。
そして俺が居た位置は保健室から充分声が聞こえる距離だ。

「冬原が、な…」
「ああ、あいつか…」

琥太郎センセもあいつの事を気にしているらしい。まあ…学園で2人だけの女子だからなあ。

「あー…俺って、頼りないかな…」
「…さあな。知らん」

見事に突き放してくれる、この先生は…!まあ、慰めてもらっても…反応に困るだけだ。



『っ、は…っ!』

どこに向かってるんだろう私ってば。
玄関に向かって走っていたはずなのにどういう訳か屋上庭園に居た。

きっと無意識に足が向いたのだろう。ああ、私ってばバカだなあ…。
そして冬だからか、空には星がすでに出ていた。


今度からは、侵入しなくても済むようになんのかなあ。俺ら


いつだったか。君と此処で言葉を交わしたのは。そう、確か1年前ぐらいだった。
今日みたいに寒くて、今日みたいに空には数多の星が輝いていて。

『っ、』

思い出したらもうダメだった。
涙が一粒、瞼を乗り越えた。床のコンクリに染みをつくっていく。
それは、私の心の染みのようなもので、止めようがない。

へたっ、と力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。そして後ろの壁に寄りかかる。

もう泣かないって決めたはずなのに。
だって泣いたところで拭ってくれる人なんて居ないから。


ひとつだけ、ちがうところ
(あの日みたいに、)(隣にきみがいないこと)


2012.02.03 修正・加筆


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