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やめてくれ
宮地くんの行動を謎に思いながら図書館を出ると、いきなり会いたくない人に会ってしまった。

「冬原!」
『不知火先輩…?』

なんで、そんな焦った顔をしているのかが分からない。不知火先輩は私の方へ駆けて来て私の両肩を掴む。

「大丈夫か!?」
『…なにがですか?』

必死な顔で問いかけられても何を問われているのか分からない。

「おまえ図書館で誰かに手ぇ掴まれてなかったか?」
『…なんで知ってるんですか』

だってこの人さっき図書館と別の方向から走ってきた。
何で知ってるんだろうか。広まるにしては早すぎる。

「視たんだよ」
『………ああ、星詠み』

一瞬漢字変換が出来なかった。

「急いで来てみたんだが…遅かったか」
『宮地くんに助けてもらったんで大丈夫です。それに、早かろうが遅かろうがどうだってないですよ。顔に傷が付くぐらいのものですから心配して頂かなくても大丈夫です』

そう言って不知火先輩の横を通り抜けようとしたら。

「待て」

腕を掴まれて牽制がかかった。
そして、聞こえた声は少し低いように聞こえた。

『…なんですか』
「なんでそんな事言うんだ」
『なんで、って…』
「傷付くのはお前にとってそんなに問題じゃなくても、他の奴らには問題なんじゃないのか?」
『他の奴らって、…誰が?』


Side Kazuki

誰が。誰がって言ったか、もしかしてこいつ。
俺は少し困惑しながら答えた。

「誰がって、…月子とか宮地とか」
『そんなわけないじゃないですか』

思いっきり、真っ向から否定された。

『だって、あの人たちにとって私は…ただの同級生でしょう』

あなた馬鹿?という目で見られる。
え、俺が悪いのか。いやいや馬鹿はお前だろ。

「あいつ等はそんなこと思ってないと思うけど」
『そんなこと、不知火先輩が分かるわけないじゃないですか』

そう言うと冬原は自嘲気味に笑った。
やめてくれ、そんな笑い方。

「俺は、お前が傷付いたら嫌だ」
『………失礼します』

冬原が腕を自分の方へ引っ張った。
呆然としていた俺が掴んでいた手はするりと簡単に抜けていく。

そして冬原は何もなかったかのように俺の隣をするりと抜けてどこかへ行ってしまった。
なんでそんな顔するんだ。なんで、そんな泣きそうな顔をする。

頼むから。頼むから、
何も言わないのだけは、やめてくれ

2012.02.03 修正・加筆


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