lonely lonely | ナノ

程がある
本棚に沿って床に座り込む。どうやら思った以上に怖かったらしい。はは、情けな。
掴まれた右手はそのまま不自然に上に上がったままで。

「俺は、何をしているんですかと聞いているんです」

宮地くんは先輩でも臆することなく、きっと睨みつけながらそう問いかける。
そして手を掴まれた先輩はそれだけで怖気づいた。

「っ、なにもしてねえよ!大体お前に関係ないだろ!」
「いや関係なくはないですが…そうですか。だったらコイツの手を離してくれませんか」

いや、その前に貴方が先輩の手を離すべきじゃ…。

服の上からでも分かるほど掴んだ手には力が込められている。
宮地くんが掴む力を更に強めた為、先輩は痛みで顔を歪めた。そのせいかハルキの腕を離した。

ハルキの手がそのまま下に落ちる。

「っ…分かったから離せよ!」

そう叫んで先輩は宮地くんの手を強引につっぱねてどこかへ消えていった。
宮地くんはしっかり先輩がどこかへ行ったのを見届けて、私の前にかがんだ。

「大丈夫か」
『あ、はい…だいじょ、ぶです』

そうか、と呟いて笑った顔を見せた。…笑った顔初めて見たかも。

「悪い、気付くのが遅かった」
『いえありがとございます…それにしても宮地くん、何でここに?』

なんてったってここは人気の少ない本棚だ。偶然ここに来たのだろうか?

「む、ああ…、本を借りに来ようと思ってだな」

そう言って私の後ろの本棚を探る。

「む、ないな…あれがないと課題が出来ないんだが…」

眉間に皺を寄せてそう言った。あ、課題って、もしかして…。

『宮地くん探してるのってもしかしてこれですか?』

そう言って傍らに落ちていた本を手に取り宮地くんに見えるように掲げる。

「ああ、それだ。お前も星座科の課題をやっていたのか?」
『はい。あ、でももう終わったので全然良いですよ』

本を宮地くんの方へ差し出した。
渡そうとした時にハルキの手が宮地くんに触れた。

「っ」

宮地くんが受け取るはずだった本は見事に床にダイブ。

「わ、悪い」
『いえ、大丈夫ですよ』

床に落ちた本を拾い改めてちゃんと渡す。

『…顔、赤いですよ?』
「は!?…っ、なんでもない!!」

そう叫んで、本を取りそのまま走ってどこかへ行ってしまった。
少しだけ見えた顔はやっぱり見間違いなんかでもなく真っ赤に染まっていた。耳まで。

…なんで、ウソついたんだろう?その場で小首を傾げた。


Side Ryunosuke

「っ〜…!」

触れたところが熱い。また引き起こった動悸は収まりそうにはない。

自分のノートや教科書をまとめていた席に戻る。
幸いな事に周りには誰も居ない。

机に突っ伏す。視界はブラックアウト。思考だけフル回転。

まただ。
なんで、また動悸が!
鈍感にも程がある。
(…なんでだ、ワケ分からん)(む…課題をやらなければ)


2012.02.03 修正・加筆


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