Side Kazuki
なにも知らないくせに、ねえ。指先でペンを持て余しながら呟く。
ふっ、と笑みがこぼれた。もちろんマゾってわけではない。
はじめて、あいつの素に触れたような気がした。
いつも見るあいつは上辺だけ。決して自分の芯は見せない。そんな奴だったと思ってる。
まあ、怒らせればそれが見えるっていう状況はあんまり面白くねえけどな。
くるっ、とペンを指先で回すと失敗してペンは書類の上に落ちた。
なにも知らないくせに。そうだ。俺はお前のことはほぼ知らねえ。
だから俺はお前のことを知るために動くことにする。文句は、聞こえない。
なにも知らないくせに。そんな事はもう言わせねーよ。
俺は生徒会室から出て、あるところへ向かった。
言ってしまったので課題をやらないわけにはいかず。
図書館で黙々とやっていると携帯がメールを知らせた。
開くと月子ちゃんで、写真つきのメールだった。
マフラーはハルキちゃんのかな、と書いてあった。
写真には朝つけたはずのマフラーに包まって寝ている猫。外しちゃったのかな…、もしかして。
まあでも。写真に目を戻すと気持ち良さそうに目を閉じている猫。…まあ、あったかそうだしいいか。
…返信、どうしよう。
迷いに迷って返事を書くのに5分かかった。
その猫です。
マフラーは私のです。
…これは、送って、いいのだろうか。
我ながらメール文化のなさがありありと見せ付けられた文章だった。
そしていざ送信ボタンを押すとなると、
悩んで悩んで、
(ぜんぶけした)
2012.02.03 修正・加筆