遠回りして玄関を通ったら、やっぱり誰もいなくって一人苦笑を漏らした。
「田畑くんはいなくて、リョウも…いないね」
下駄箱を少し開けて上履きがあるかどうかを確認。いないということがわかり私は、はあっと溜息をつく。
「帰ろ」
リョウのことだ、結局田畑くんと話ながらゆっくり帰っているんだろう。まあ田畑くんが彼女さんと帰るなら別だけれど。私はゆっくり歩いて帰れば二人いや三人に会うことはない。いつもより歩くスピードを落とし、周りの風景を見ながら歩いた。 季節はもうすぐで移り変わる。咲いていた向日葵も今は種を下にボロボロと落とし、夏の終わりを強調させる。
「衣更えの季節か…」
どこに冬の制服をしまったっけ、と自分のクローゼットを思い出し頭の中で探す。ぐるぐると考えていてもまだ田畑くんのことが気になる。しっかりクローゼットを考えられやしない。田畑くんめ。 苛々しながら、目の前にあった石を蹴っ飛ばす。小さい頃やったようにまた、蹴っ飛ばす。カラン、カランと石は音を立て転がっていく。
「名前?」 「…、リ、リョウ…!」
見つかってしまった。なんで私石を追い掛けてたの。まあ、理由なんて蹴りたかった、しかないんだけれど。それ以上も以下もない。 リョウは何やってんだお前、みたいな目線を私に投げ掛けている。ああ、もうだから嫌なんだよ。
「な、名前。夕飯そっちで食べていいか?」 「…は?」 「鍵、家の中に置いてきた」 「何やってんの」 「いいよな?流石に玄関前で体育座りとかしたくねーし」 「ダメって言っても来るでしょーが」 「まあな」
にひひ、とどことなく企んだような笑い声を出された。なんなんだ、一体。
一人の部屋に君と僕
(お邪魔します。久々にお前の家来たわ…!) (いや、先週もご飯食べに来てたから)
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