くるり、と私は椅子を回す。 親元を離れ、一人暮らしをしている私はただの大学生であったりしている。最近の趣味は金造さんのライブを見に行くことと、金造さんと連絡を取り合うことだったりしている。
「よし、今日も一日頑張ろ」
伸びをして、着替え、荷物を持ち、私は大学へと向かっていった。一応私は教育学部に所属していて、人に何かを教えたりするのが好きだった。でもさすがにこの現状はどうしようもないか、と私は携帯を開いた。 わあわあと小さい子達が騒いでいて、慌てている。私は彼らの目線に立ち、どうしたかと問い掛けた。
「あんな、変なな、奴おんねん」 「角とかあってな、襲ってきて逃げたんや」
角、変な奴…、何かの化け物の類を見たんだろうか。否定したとしても多分今は無視だろう。興奮しきっている。
「とりあえず、幼稚園とかに行くか…」
私は彼らの洋服やらを見て、近くの幼稚園に連れていった。
「ありがとう、お姉ちゃん」 「いいえ、今度から気をつけなよ」
そういって、私は彼らの頭をくしゃりと撫でる。上を見上げると時計。…あ、遅刻だ。
「じゃあ行くね、」 そういって立つと彼らは小さく手を振ってくれていた。
「小さい子は可愛いな…」 「危ない!」
危機感たっぷりの声が後方から聞こえ、後ろを振り向いた。
「……金造、さん?」 「おん!名前さんやったか、よかったわあ…」
金属の何かを振り回し、金造さんがいた。
「どうかしたんですか?」
金造さんは私のことをちらりと見て、頭をかいた。
「堪忍な、なんも言えんわ」 「…?」
金造さんはどこかおかしいけどこんなに歯切れが悪い答を聞いたことはない。
「…あー、もう考えるんはやめや、やめ!頭痛い!」 「そう、ですか?あ、私もう行きますね、では」
私はそういって彼の元を去って行った。
――――――
気付いてない、ということは彼女は悪魔が見えていないようだ、という理解をし、俺は口をつぐんだ。言っても、信じてもらえないのはわかっているからこその結末だ。 でも彼女に嘘をつく、というのは俺にとって痛いもので、退治したというのになんだかすっきりしなかった。 言ってしまうと、魔症を受け実際に見てもらったほうが早い。でも、名前さんには見せたくなかった。あの人は、あの人の世界があるからこそ何もいえなかったし、出来なかった。「なんやろな、これ」
ぎゅ、と締め付けられる圧迫感。俺は体験したことがなく、その痛みを和らげようとし、彼女のことを思い出した。
世界は君を中心に回り始める
俺の世界には君がいて、
111103 金造さんは鈍感だと信じてる
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