わああ、と小さな部屋で歓声が上がる。その中心には、ボーカルにいる金髪の彼。周りの人達もおそらく人気があるだろうけれど、私にはボーカルの彼しか見ることが出来なかった。
それから毎日のように私は彼の歌を聞きに行った。彼のバンド名がなかったら即帰る。それほど私は彼の声に惹かれていたのかもしれない。でも、それは私だけではなく、割と多くの女性客は彼の歌声を聞きにやってくるという。さすがに毎日のように来る人は初めてだよ、と受け付けの人が笑った。受け付けの人は割と仲がよくなっていて、彼に今日金髪の彼のバンドがあるか、ないか問い掛けてから私は残ったり、帰ったりしていた。
「名前さん、今日来るかもよ」 「本当ですか、是非とも行きます」
彼らの歌声を聞いて、私は中毒のようだった。CDとか出してくれないかな、とか、何かやってくれないかな、とか。私はただのファンだから願うことしか出来なかったけれど。
受け付けの人に少し贔屓してもらい、私は前のほうにいた。いつもは彼の歌声だけで満足してしまう私だから後ろのほうで耳を澄まして彼の歌声を聞いていた。
「よお、来てくれたなあ!」 彼が近い。周りの女性客の熱が半端ない。私はさすがにそれには乗れず、ぼうっと彼らを見ていた。 揺れる、揺れる、跳ねる、跳ねる、後ろで見ているよりも前は活力があって、なんだか異世界のように感じられた。
「ありがとおな!」
そういって消えていく彼のバンド。私は、ほろりと涙を浮かべた。意味はわからないけれど、なんだか満ち足りたようだった。
これは恋なんかじゃない
多分ただの憧れなんだろう
111023
金造さん書いてみたかったんです。 祓魔とは全く関わりあいないですよ!
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