漫画のほうも佳境を向かえ、それに伴い燐もだんだん格好よくなり、私も一段と惚れ込んでいた頃。非通知の電話。もしかして、と思い、とると懐かしい彼の声。からり、と引き出しを開け趣味の悪いピンクの時計を眺める。
「このピンクの時計ってメフィストの?」
「おー!まあ俺いらねぇから貰っといてくれよ!」
「思い出の品として貰っておくね。あ、もう時間。じゃあね」
プチリ、と電話が切れる。ああ懐かしい声だった。
時間は3分と短いが、何も言わなくても伝わる。頑張っているんだ。
「頑張らなきゃ、かな」
燐と会った後、数年は経った。いつ電話がかかるか、とその間はそわそわしていたものだった。私はもう変わらなきゃいけない。燐が素敵になったように、私も変化しないといけない。
「新規契約してきますか」
私はぐいと伸びをして、先程まで空いていた引き出しに携帯電話とピンクの時計を押し込んだ。
「携帯変えてくるー!」
私は父母にいって、携帯ショップへと向かったのだった。
120119