彼はそう、私に会いたくて来たわけじゃない。ただ謎が知りたかっただけなのではないか。そうに決まってる。でももし違ったら?自惚れちゃうよ?
「燐、それって…」
問いただすとぷい、と外を向いてしまった燐。顔が少し赤みを帯びている。期待、しちゃうよ。
「……気になってたんだよ、お前のことが!次元が違うからって、会いたいもんは会いたかったんだよ!悪かったな!いきなり押しかけてきて…、」
期待、しちゃって、いいのだろうか。でもこのままだと漫画に影響が出てしまう。それはダメだ。多くのファンの方たちに迷惑がかかってしまう。
「燐、ありがとう。迷惑なんかじゃない。私も会って話してみたかった。でも私、あなたの成長を見守ることにした。ここに燐がいれば、漫画の世界はなくなるし、私が向こうに行くのなら、私の住んでいることもなくなっちゃう。それは嫌なの」
ゆっくりと語りかけるように燐にいっていく。わかって、くれるだろうか。理解していても、動けないんだろう。今の私と一緒。
「………わかった、」 「ありがと、わかってくれて」
「…ちょっと楽しかったし、どーせ雪男がカンカンに怒ってるぜ…!」
笑いながら言う、燐はいつも漫画で見ていた燐の姿だった。あんたはそのままがいいよ。
「えーとじゃあ、さよなら、だな」 「そうだね、また来れたら来る?」
冗談のつもりでいったのに、あなたは、おう、と元気な返事をして消えていった。 残ったのは、私の中にある思い出とおもいっきり趣味の悪いピンクの時計。おそらくメフィストピンクだろう。笑える。
「こんなの残して行かないで欲しい…未練残るだろうに…」
本当は戻ってほしくなかった。でも、いいんだ。彼の成長はゆっくりゆっくり漫画で見れて行ける。最終回になったら、彼の姿を見て頑張ったなあと思うのだろうか。
「燐ってキャラの中で1番好きだよー」
誰もいない自室で呟き、私は時計を鍵付きの引き出しの中へ入れた。いつか、この思い出も笑いながら話せることを願いながら。
120119 本編は終了!
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