起きたら私は彼の胸元に顔を埋めていてあんまり汗くさくなかったな、と変態くさいことを考えて、少し恥ずかしくなる。

「…いたい…」

起きろ、と頭に彼の手が振り下ろされ、ちゃんと訓練とかをしているんだなあと思うほど痛かった。本気だったあれ。むくりと起き上がり、欠伸をする。

「起きないのが悪ぃんだよ」
「なんで、いるの?」

彼の暴言を無視して気になることを聞いてみる。次元が違うと言われたのに、何故いるのかがわからない。そう問うと彼はがしがしと髪を掻いた。ちくちくと当たる髪に本当に彼がいるのかと実感する。

「あー、メフィストの野郎がな…」
「何かしてくれたの?あの胡散臭いのが?」

正直なことを述べたら燐は大笑いした。だってあなたも最新は思うでしょう。あのピンク色なんてみたら、初対面だったら胡散臭いったら仕方がない。

「まあ、そうだな。あの胡散臭い奴が俺とお前を会わせてくれたんだよ」
「……ほっぺ引っ張ってくれない?」

有り得ない、有り得ない。何これ、夢。でも覚めてほしくないけど……。

「いたい」
「そりゃな」

にかっ、と笑う燐を見て、感情と一緒に動く尻尾がみたい、と思いたった。

「尻尾、見たい」
「は?いいけどさ、変な風に触んなよ」

シャツをたくしあげ、素肌が見える。少し逞しくて、ちゃんと授業とか受けてるのか、と少しうれしくなった。

「燐、尻尾ないよ?」
「は?」

しかし、私が所望した尻尾は見当たらず、ただズボンに穴が空いているだけ。どういうことだ。

「…違う、から」
「は?」
「ここは違うんだよ。燐がいるべき場所じゃない。燐がいなきゃいけないのはあの向こうでしょ?」

自分の姿が写らない鏡を指す。いつもは写るのにおかしいとは思っていた。
燐は少し口ごもり、俯いた。
ひどいことを言ったのはわかっているけれど、燐が来てくれて嬉しいけれど、違うんだ。色々と。

「燐、帰らなきゃ、ダメだよ。これから大変なことも待ってるんだから。私は君の活躍を別の世界から見てるから、ね」
「…いやだ」
「え、」
「せっかく名前に会えたのに、そんなん」

その言葉は私に会いたいが為に来たようにしか聞こえなかった。


120115

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