呼び鈴が聞こえる。なんで、電源は切ったはず。初期設定の呼び鈴、何かを呼んでいるみたいに、鳴っている。
「な、何、どういうこと…」
私は携帯電話をそっと持ち、中を開く待受は真っ暗。何も見えない。でも音は聞こえる。出ろってことなの、出なきゃならないの。意を決して私は電源を入れリダイアルをした。 呼び出し音が1、2、3。
『つ、…がっ…。ど…』 「ごめんなさい!」 『え、……し、』
私は謝り、電源ボタンを押した。燐の声だったけれど、なんだか様子もおかしかったし、怖かった。どういうことなの。何もおきない、よね。
それから呼び鈴は聞こえなくなった。安心もあったけど、なんだかひどく寂しかった。
「…夢、なんだよね、」
ぐい、と頬を引っ張る。引っ張りすぎて頬が赤く腫れてしまった。多分冷やせば大丈夫だと思うけれど。 バイブレーションにしていた携帯が震えた。メール、らしい。中を確認すると、夢かと思っていた彼からのメール。
『……燐』
本文は文字化けで読めなかったけれど、燐の名前だけ表記されていた。私とアドレスを交換した人で燐、という名の人は知らない。アドレスを確認すると、アドレスも読めない。やっぱり、燐でいいのか、という安堵とメールしてもいいのか、という心配で、私は空メールを送信した。
111114 |